関東大震災の復興期に登場した「宮造り」とよばれる東京型銭湯の代表的な建築物として、江戸東京たてもの園に移築・保存されている「子宝湯」と、2021年に廃業した「キングオブ銭湯」こと大黒湯の在りし日の姿を3Dデジタルデータで鑑賞できるオンライン展覧会が開催中です。

この展覧会は、6つの都立ミュージアム(江戸東京博物館、東京都写真美術館、東京都現代美術館、東京都庭園美術館、東京都美術館、江戸東京たてもの園)が収蔵する約40万点の資料・作品を検索できるデータベースTokyo Museum Collection:東京都立博物館・美術館収蔵品検索(ToMuCo=トムコ)」の特設ページで、2024年6月26日~10月27日まで開催。パソコンやスマホでアクセスして、誰でも自由に鑑賞することができます。

ToMuCo(トムコ)内特設ページ
https://meta-bath.museumcollection.tokyo/

昭和4(1929)年に足立区千住元町に開業した「子宝湯」は、堂々たる宮造りの外観に唐破風と入母屋破風、七福神の彫刻、脱衣場の折上げ格天井など、当時の平均的な銭湯の倍以上の費用をかけたという贅を尽くした東京型銭湯。映画『千と千尋の神隠し』に登場する「油屋」のモデルの一つとされています。昭和63(1988)年に廃業後、平成5(1993)年に小金井の江戸東京たてもの園に移築・復元されて現在に至ります。

子宝湯の男湯の内観

 

この3Dデジタルデータは、子宝湯の現状記録を目的に、アーツカウンシル東京と江戸東京たてもの園が東京都と協働で推進する「TOKYOスマート・カルチャー・プロジェクト」の一環として作成されたもの。最新の技術と機器を駆使して、100地点のレーザー計測と6000枚にも及ぶドローン撮影、ミリ単位の凹凸計測により、部材の細かい形状から質感まで、詳細に再現されています。普段は立ち入ることのできない庭や番台、間近では見られない大屋根や唐破風、天井などの部材などを、外からも中からも自由な視点とスケールで観察できるので、子宝湯を訪れたことがある人にとっても、きっと新たな発見があるでしょう。

3D子宝湯の横断面

 

さらにこの展覧会には、2021年に惜しまれながら90余年の歴史を閉じた足立区千住の大黒湯のMeta Bathも組み込まれています。「キングオブ銭湯」として親しまれた老舗銭湯の解体前に記録された3Dデジタルデータにより、浴室やサウナ、脱衣所、休憩スペース、ボイラー室などが細部まで再現されています。ほぼ同時期に同じエリアに建てられた子宝湯との比較を通して、銭湯の文化や歴史をより深く学ぶこともできます。

3D大黒湯

 

この展覧会の鑑賞は、スマホやタブレット、パソコンなど、AR(拡張現実)機能付きの機器で専用サイトにアクセスすると、ツアー導線に沿った3D空間で案内・解説をしてくれます。操作に不慣れな方でも、画面をスクロールするだけで設定されたルートをたどって見学ができるほか、ポイントとなる箇所の「!」マークを押すと、詳しい解説が表示されたり、ARを起動して子宝湯を目の前の空間に登場させることもできます。画面のメニューから見たい場所へ飛んで、実際に見学しているような感覚と、3D空間ならではの見たいところにすぐ近づける自由な視点との融合も楽しめます。

AR機能で目の前の空間に登場させることも

 

Meta Bathにどっぷり浸かり、デジタルならではの鑑賞体験を通して、東京の銭湯文化や歴史を楽しんでみては?


■開催概要
Meta Bath(メタバス)~デジタルで見る子宝湯~
会期:2024年6月26日(水)~10月27日(日)
会場:Tokyo Museum Collection―東京都立博物館・美術館収蔵品検索サイト内特設ページ
https://meta-bath.museumcollection.tokyo/
閲覧無料/PC 推奨(スマートフォンにも対応)