去る5月13日(土)、4年ぶりに開催された神田祭に、「銭湯山車(だし)」が登場しました!
銭湯山車とは、文京区を中心に10年以上活動をしてきた「文京建築会ユース」のメンバーが中心となって、文京区界隈で廃業後に解体された銭湯から引き取った廃材を元に作った山車です。
銭湯山車の巡行は、プロの彫刻家や建築家を含む山車の製作メンバーの栗生、三文字、内海、村田を中心に構成され、「BKY(文京建築会ユース)+銭湯山車巡行部」として2020年~2021年に開催の「国際芸術祭東京ビエンナーレ」に参加。「廃業した銭湯を弔い、現役の銭湯を寿ぐ」をテーマに都内各所を約10km練り歩き、続く翌2022年にも巡行を行なって、銭湯の魅力を広く発信してきました。
銭湯山車の部材に使われているのは、廃業した4軒の銭湯のもの。カランや看板、時計やロッカーなどの小物に加え、正面の唐破風は大黒柱から掘り出すなど、引き取った品々で丁寧に構成されています。文京区にかかわらず、銭湯が消えてしまった地域の人々や銭湯関係者の無念さや悔しさ、忘れられない銭湯での楽しい思い出を背負いつつ、1軒でも多くの銭湯が元気に長く続いてほしいといった祈りが込められています。そして、多くの人々に引き回され、少しずつ本当のお祭りの「山車」のような貫禄が出てきました。
3年目になる今回は、江戸時代から幕府の御用祭として、日枝神社の「山王祭」とともに「天下祭」と呼ばれ、400年の歴史を誇る神田明神の「神田祭」の大舞台に公式参加することになりました。祭りを賑わすさまざまな出し物が登場する行列、「附け祭」という枠組みで、門前仲町から日本橋、秋葉原、そして神田明神へと約40名の参加者とともに大通りを練り歩き、銭湯の存在を盛大にアピールしました。
今回は大きな晴れ舞台ということで、「東京都浴場組合」から借りたお揃いの「ゆ」の半纏と、「チンドン!あづまや」さんの「いい湯だな〜♪」の生演奏に合わせて歌って踊る、華やかな演出を披露。煙突からは煙がのぼり、一帯を埋め尽くすシャボン玉の中、2台の動く「おかまドライヤー」に先導されて、迫力の銭湯山車が登場し、その後ろからは男衆による高さ5m近い大きなノボリが続きます。この特大ノボリは、6枚並ぶと原寸大の富士山のペンキ絵となる仕掛けとなってます。
約3時間近い巡行では、演舞を行いながら沿道の皆さんに「銭湯へ行きましょう〜!」と声がけを行い、沿道からは「わー! 銭湯だ!」「銭湯行きたくなった!」といった歓声が湧き起こりました。
銭湯山車の番台に入る観客や、おかまドライヤーに腰掛けたがる子供もちらほら。また、カランやシャワーからは本物の水が出るため、その場で頭を洗い出す外国人観光客も見られました。
午後6時近くに、附け祭の隊列が神田明神の鳥居に到着。数千人もの観客と入り乱れ、掛け声や歌声の中、銭湯のアピールも最高潮に。「いい湯だな〜♪」の大合唱とともに、無事宮入りを果たしました。
江戸の中心で多くの方々と一緒に盛り上がった、神田祭での初の銭湯山車巡行。参加者はもちろん、沿道で見学していた方々も銭湯の楽しさや気持ち良さを思い出し、銭湯の大切さを再認識する機会になったことと思います。
(文:文京建築会ユース/栗生はるか 写真提供:田井中潤)