東京都内12軒の銭湯で3月21日、28日、4月4日に各4軒で「こんぶ湯」を実施することが決定した。
このイベントは横浜市八景島沖でコンブの栽培により地球温暖化対策に取り組む「一般社団法人 里海イニシアティブ」の提案によるもので、東京都浴場組合・広報委員会のメンバーの銭湯12軒で3回に分けて実施する。
●“美肌効果”抜群の「こんぶ湯」
北海道大学の安井肇(やすい・はじめ)教授によると、コンブにはカリウム、ナトリウム、ヨード、カルシウム、マグネシウム、鉄分といったミネラル成分が多く含まれており、「こんぶ湯」では入浴時に皮膚から流出するミネラルが軽減されるほか、必要なミネラル分が吸収できる。その結果、ミネラルバランスが保たれ、肌のしっとり感が得られる、とのこと。
また、コンブに含まれるアルギン酸、フコイダン、ラミナランといった「水溶性粘性多糖類」という粘り成分は、皮膚表面をやわらかくしたり老廃物をからめとるほか、皮膚の炎症を抑える効果も期待できるという。
(参考サイトはこちら)
イベント当日は刻んだ生のコンブをネットに入れて提供する。どんな感触のお湯なのか、ぜひ確かめてほしい。
また、こんぶ湯実施に合わせてコンブを使用した石けん、クッキーなどの販売も検討されている。
コンブは刻んでネットに入れて提供
生のコンブをふんだんに使用
●地球温暖化対策に役立つコンブ栽培
コンブは地上の森林と同じく、光合成により水中の二酸化炭素を吸収し酸素を輩出するが、コンブは二酸化炭素吸収量が杉の木の5倍になることがわかっており、海でコンブを育てることで地球温暖化の原因となる二酸化炭素を削減することができる。
このように海藻や海草などが光合成によって海域に貯留した炭素のことを「ブルーカーボン」というが、里海イニシアティブは横浜市が推進する「ヨコハマブルーカーボン構想」に沿って、横浜市の八景島沖で2015年秋よりコンブの計画栽培を行っている。栽培場所が金沢文庫に近いことから「ぶんこのこんぶ」と名付けられたコンブは市場に卸したり、さまざまな商品に加工され販売されている。今回の「こんぶ湯」では、この八景島沖で採れた生のコンブがふんだんに使用される。
コンブの計画栽培は八景島沖で行われている
3~4mに育ったコンブ
一般社団法人里海イニシアティブ
https://www.satoumi-i.com/
「コンブが地球温暖化の防止に?海や農家を救う養殖プロジェクト」
https://www.fnn.jp/articles/-/59890
●浸かって満足、環境にも貢献
「こんぶ湯」を提案した里海イニシアティブの理事・富本龍徳さんは「こんぶ湯は美容面でさまざまな効能が期待でき、銭湯と相性がいいと考えた。また、銭湯の利用者を通して少しでも多くの方に温暖化対策や海の環境保全に関心をもらえたらと思い提案した」と話す。
この提案を最初に受けた豊島区・妙法湯の柳澤幸彦さんは「銭湯は施設やお湯を共有することからエコな施設として以前から知られていたが、近年SDGs(持続可能な開発目標)が注目されていることもあり、銭湯もSDGsを通して社会貢献できないかと考えていた。里海イニシアティブは、SDGsの目標である“気候変動対策”や“海の豊かさを守る”に取り組んでおり、お客さんに喜ばれるこんぶ湯は銭湯にとってもありがたい提案。双方にメリットがあることから協力して取り組むことにした。まずは今回こんぶ湯を実施する12軒の反応次第だが、ゆくゆくは約500軒ある都内の全銭湯に広げていきたい」と意欲を語る。
なお、こんぶ湯で使用された後のコンブは、畑の肥料にすることをはじめ、さまざまな再利用の方法が検討されている。
コロナ禍で外出機会やリアルなコミュニケーションが減る今、浸かって満足、環境にも貢献できる「こんぶ湯」へぜひ出掛けてみては。
「こんぶ湯」の日程と実施浴場は下記の通り。
●3月21日(日)
湊湯(中央区)、栄湯(新宿区)、庚申湯(西東京市)、蒲田温泉(大田区)