銭湯で入浴しながら男女が壁越しに短歌を詠み合い、歌の内容や声でカップルを決める合コン「歌垣風呂」が、8月31日、万年湯(新宿区大久保)で開催された。

歌垣は、古代日本で行われていた風習の一つで、田植えや祭りの後に男女が集って短歌を詠み合い求愛する行事。「歌垣風呂」主催者の陸奥賢さんは、以前銭湯を盛り上げようと銭湯で音楽のライブイベントを開いていたが、「男女を仕切る壁が邪魔。スペースが半分になってしまう」との声があった。そこで「歌垣」をモチーフに、弱点である壁を利用しようと発案したのが「歌垣風呂」。2015年から大阪・京都・滋賀などの銭湯で過去13回開催し、東京では今回で3回目となる。

 

当日は男性6人、女性5人が参加し、主催者から出された「お題」を受けた短歌を浴室の壁越しに即興で披露。「吐息」というお題では、女性が「私でも 色っぽい吐息 出るのかな 練習してみた 中三の夏」と詠めば、男性が「初めての 二人で外泊 電気消す こんな近くに 君の吐息が」と艶っぽい歌で返すなど、お互いの心をつかもうと参加者はそれぞれに頭をひねる。

顔も年齢もわからない中、参加者は声と歌の印象から相手の人柄を探り、フィーリングが合った人の番号をメモに控える。歌を詠み終わった後、脱衣場で交流会が行われ、ここで初めて男女が顔合わせ。主催者の陸奥さんが、フィーリングが合った人同士の番号を確認し、2組のカップル成立を告げると、大きな拍手が贈られた。

「成立したカップルは、連絡先の交換をお願いします。1回ぐらいはデートに行ってください」と陸奥さんが語りかけると、参加者一同から笑いがわき起こった。終了後、軽食が用意された交流会では、お風呂上がりのリラックスムードの中、お互いに打ち解けた様子で盛り上がりを見せていた。

この日の参加者の中には銭湯を利用したことがない人もいたが、万年湯オーナーの武田さん夫妻さんは「これを機会にまた銭湯へ足を運んでもらえれば」と挨拶。

 

参加者男性の一人は、「短い時間でも意外とスムーズに短歌が詠める。顔合わせ後の交流会も盛り上がって楽しかった」と話した。

陸奥さんは「過去13回の開催で計30組のカップルができ、実際に交際が始まり同棲している人たちもいる。今日も2組できたようにカップルの成立率はとても高い。今後も東京で開催していきたい」と語った。次回開催は決まり次第、FacebookやTwitterで告知される。

歌垣風呂 Facebook:https://www.facebook.com/utagakiburo/
陸奥賢Twitter: https://twitter.com/mutsukyoukai