過去2年に計4回開催されて好評を得ている「銭湯入門塾」が、今年も10月20日(土)、10月27日(土)に開催された。このイベントは銭湯に親しみを持ってもらおうと東京都浴場組合が企画したもの。
10月20日(土)は、短期滞在の外国人旅行者が対象で、会場は見事な日本庭園があることで知られる足立区のタカラ湯。
この日参加したのは、都内最大級のゲストハウス「エンブレムホステル西新井」に宿泊する外国人旅行者で、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、ドイツ、アルバニア、スイス、イギリスなど様々な国籍の計16名。講師は銭湯ファンのアメリカ人英語教師・アルフレッドさんが務めた。
最初はタカラ湯経営者の松本康一さんを交えて、脱衣場で銭湯やタカラ湯の歴史について紹介。次に浴室で湯船を前に電気風呂やジェット、薬湯などについて説明した。参加者は全員銭湯に来るのは初めてとあって、興味津々の様子。「銭湯と温泉は何が違うのか?」「タトゥーがあっても入れるのか?」など様々な質問をアルフレッドさんに投げかけていた。
浴室を見学した後は、「キングオブ庭園」「キングオブ縁側」とも呼ばれる日本庭園に出て鑑賞したり、池の鯉に餌をやったりして日本情緒を楽しんだ。
見学終了後、マナーを確認した後は入浴タイム。大きな湯船に大勢で入るのは初めての経験とあって、はしゃぎながら楽しいひとときを過ごしていた。
10月27日(土)は、川柳作りをきっかけに銭湯へ足を運んでもらおうと「銭湯川柳教室」を、デザイナーズ銭湯として人気の新宿区・栄湯で開催した。この日は大学生から高齢者まで幅広い年齢層の21名が参加。講師はNPO法人「シニア大樂(だいがく)」川柳サロン主宰の藤井敬三さんが務めた。
参加者のほとんどが川柳初心者であることから、まずは川柳の歴史から講義はスタート。「川柳」は江戸時代の代表的な選者・柄井(からい)川柳に由来しており、人の名前がそのまま文芸ジャンルになったのは世界でも川柳だけであると藤井さんが語ると、驚きの声があがった。
また、同じ十七音で作る俳句と比べると、川柳は季語を入れる必要がなく、口語体でよいなど、より自由度が高い庶民の文芸であることが強調された。
続いて川柳作りのポイントが伝えられ、基本を抑えたところで次は川柳の鑑賞へ。藤井さんがゆっくりと明瞭な声で川柳を読み上げ解説を行うと、句によって笑ったりうなづいたりと参加者も楽しそう。銭湯川柳コンテストの秀作も詠み上げられ、どこがよいポイントなのかを解説した。「頭の中で想像して作った句と、実際に入浴して作った句は実感のこもり具合が違うんです」と藤井さん。
川柳作りのリズムやコツを学んだ後は、いよいよ実際に川柳作り。
「初心者は特に字余り、字足らずを避けてください」と音字数の数え方を教えた後、「幸せは」「楽しみは」の上の句に続く川柳を作るお題が出されると、次々に参加者から作品が披露された。
中には字余りや字足らずの句もあったが、即座に講師の藤井さんが訂正すると、「なるほど!」とうなずく参加者たち。
「幸せは サウナ水風呂 生き返る」
「幸せは じんわりしみる ぬるめの湯」
「楽しみは 熱湯の後の 生ビール」
「楽しみは 金曜夜の 風呂屋さん」
次々に出来上がる句を参加者一同で楽しむうちにあっという間に時間が過ぎ、最後に東京都浴場組合が通年開催している銭湯川柳コンテストへの投稿が案内されて川柳教室は終了。参加者は湯上がりの一句を詠むのを楽しみに(?)、浴室へ向かった。
川柳ブームの今、川柳作りをきっかけに銭湯へ足を運ぶ人が増えることが期待される。