2018/01/18

トピック

(上写真)観音湯の女湯。隅から隅まで掃除が行き届いています


前編はこちらからどうぞ

 

銭湯の1日は、前日の店じまいからのお風呂場の掃除、釜炊き、開店準備など、やることは朝から山盛りで、開店したら接客、定期掃除、湯温調整、それが深夜まで続きます。毎晩寝るのは1時過ぎだそうです。

印象的だったのは掃除に関するお話。上田さん曰く、「人間の垢は炊いたご飯と同じで、時間が経つとカピカピになって取れにくくなる」。だから、店じまい直後のその日のうちに掃除をするのが理想なんだそうです。ただ、体力的なこともあり、掃除をして就寝時間が今より後ろにずれては長期的に続かない。

また、深夜に眠い目をこすりながら掃除しても、翌日太陽光の下で確認すると、絶対掃除し忘れている箇所があるんだそうです。そうするとやり直しで、かえって手間がかかるので、現在は割り切って、店じまい後は最低限の業務だけ終えて、掃除は次の日の朝、お天道様がのぼってから始めるのだとか。

この話は、自分が今の仕事で残業した時にそっくりだなあと思いながら聴いていたので、よく覚えています。このエピソード一つとっても、全てにおいて、結果に対して最も効率的な方法を模索していらっしゃる上田さんの努力が伺えます。

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よく見ると、鏡の一つ一つに地元のお店の広告が入っています

釜焚きもちょっとだけ体験させていただきました。廃材を細かく切って釜の中に投げ込む作業は単純そうに見えますが、常に中腰なので、なかなかどうして腰にきます。また、ご主人の手が離せない時に奥様も釜焚きをするそうなんですが、奥様の負担を軽くするために、更に小さく細かく切ってある廃材を見て、奥様への愛情を感じて、ひとりでニヤニヤしてしまいました。

ご夫婦はそれぞれ別の持ち場があるので、昼以降はずーっとすれ違いです。「それが夫婦円満の秘訣かもね」といたずらっぽい笑顔で答えてくださったおかみさん。

銭湯を、単なる商売という枠を超えて、絶えず「どうやったら来てくれた人にもっと心地よさを感じてもらえるか」という点について考えて、アイデアを継続して実行している、頭の回転の速さが半端ないご主人。

おふたりのあたたかい人柄とあふれんばかりの銭湯愛のおかげで、お客さんは身体をきれいにして温まるだけでなく、コミュニティが形成され、居心地の良さをも提供されているのがよく分かりました。

初対面で、しかもたった1日で帰ってしまう、通りすがりに毛が生えただけの私に、地元のお菓子、入浴剤、力士手ぬぐい、富山県の銭湯キャラクターのタオル(めちゃめちゃ可愛い)などを次々に手渡してくださり、玄関で咲いていた花が可愛いですね、と何の気なしに言ったらそれを株分けしてくださり、「ミッキーマウスっていう面白い形のサボテンがあってね」とそれも分けてくださいまして、夕方、おいとまの際の私は、来た時より三倍くらい大きな袋を抱えており、「私、完全に追い剥ぎじゃんコレ」と思いました。

駅まで送ってくださって、電車が出た後振り返ったら、まだ改札で手を振ってくださっていて、学校帰りの高校生に紛れながら、40過ぎのおばちゃんは堪えきれずに車内で涙が出てしまいました。入善ウルルン滞在記(1日限定)。

自宅に着いて、今日という1日を振り返りながら改めて考えました。

今回の人生で自分が銭湯をやることができるかはまだわからないけど、こんなにあたたかい気持ちにしてくれる場所はなくなってほしくないと心から思います。このあたたかさを提供する場所作りとしての銭湯という仕事を、私はやっぱり心から素晴らしいと思うし、直接的であれ間接的であれ、関わっていけたらいいなあという思いをますます強くした1日でした。

入善町の観音湯さんは、東京の銭湯ファンの皆様はもちろん、日本中の銭湯を愛する皆さんに間違いなくおすすめの銭湯です。観音湯さんでは、深い雪にも負けないように沸かしたあたたかいお湯はもちろんのこと、それ以外の素晴らしい何かもあなたを待っています。それが何なのかを、ぜひ見つけに行ってみてください!

(写真・文:銭湯ライター 山口安代


【DATA】
観音湯
●住所: 富山県下新川郡入善町入膳5050-1
●TEL:0765-74-1126
●営業時間:14:00~23:00
●定休日:水曜日
●ホームページはこちら

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フロントの上の立派な神棚

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牛乳石鹸の暖簾。この奥は女湯です

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富山県の入浴料金は大人420円(2017年12月時点)

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ロビースペースに大好きな詩が掲げられていました

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同じケロリン桶も、富山で見ると一味違います

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あいの風とやま鉄道入善駅から、富山方面を望む