(上写真)観音湯を守る上田ご夫妻。息の合ったチームワークがステキでした
こんにちは、銭湯ライターの山口安代です。
銭湯を愛し、足繁く通う人間にとって、究極の夢は自分の家が銭湯になること。つまり、銭湯を自分で経営することです。
異論は認めます。銭湯経営は本当に大変だとよく聞くし、自分はあくまで利用者の立場から銭湯を愛したい、という人もいるでしょう。
ただ、少なくとも私にとっては、大好きな銭湯がこんなに素晴らしいということを、たくさんの人にお伝えしたいと思って銭湯ライターを拝命しましたし、究極、銭湯に関わることを自分の仕事にできたら、という考えは、ずーっと頭のどこかにありました。
えー、そこで今回、何をして来たかっていうと、12月初旬に富山県入善(にゅうぜん)町の観音湯さんで、1日銭湯インターン体験をして来ました!
富山県さん・入善町の商工会さんと仕事旅行社さんがタッグを組んで、街で唯一の銭湯の後継者探しを行う一環として、銭湯インターンを募集されていて、それに応募したのでした。
年齢もわりといっちゃってるし、銭湯って釜場と番台に人がそれぞれ必要だから、夫婦ふたりじゃないと絶対回らないのに、私はまさかの独身だし、悪条件が揃っているにも関わらず、「後継者にはなれないと思うんですけど、銭湯の仕事を体験してみたいんです!」と勢いだけで飛び込んだ私を快く受け入れてくださった観音湯の上田さんご夫妻には本当に感謝です。
入善町は、ジャンボすいかと海洋深層水で有名です。富山駅から、あいの風とやま鉄道の泊(とまり)行きに乗って40分。この列車は日本海に沿って新潟方面に走るので、車窓の右手はかの有名な立山連峰の堂々たる姿を、左手は雄大な富山湾を眺めながらの旅となります。入善駅に着くと、不思議と「帰ってきたな」と思う佇まいでした。駅から観音湯さんまでは、徒歩5分くらい。融雪用なのか、街中を流れる水路のせせらぎの音を聞きながら歩くとすぐでした。
実は、お会いしてご挨拶した後、一番最初に上田さんからは、「東京で立派に仕事をされているあなたが、わざわざ銭湯をやることはないと思うんだがね」というお言葉をいただきました。お気持ちはよくわかります。今まで大切に育んできた観音湯という自分の分身を引き継ぐ相手を真剣に探しているわけです。私だって、どこの誰かわからない人間が自分の職場にのこのこやってきて「初めましてこんにちは。突然ですが、あなたの仕事をやらせてください」と言われたら、「え、なんで?」という戸惑いが最初に来るでしょう。また、銭湯という仕事をよく理解しないでノリだけで来ちゃったけど、いざ体験してみたら「えー、何か想像してたのと違う」と私が言い出すかも、と懸念していらしたのかもしれません。
しかし、上田さんの話し方や表情はあくまで穏やかで、「よくわからないまま銭湯体験をして、勢いだけで来ちゃったこの子があとで困らないようにしてあげないと」という優しさを感じました。応募時に候補からは外れているのは最初からわかっているわけですから、酔狂な姉ちゃんが来たな、とそれなりに軽くあしらっておけば済む話なのに、あくまで真剣に候補外の私ともきちんと向き合ってくださっていることに感激しました。自分が何故銭湯が好きで、何故銭湯インターンに応募したのかを拙いけれど自分の言葉でご説明したら、とってもいい笑顔で頷いてくださいました。(後編に続く)
(写真・文:銭湯ライター 山口安代)
【DATA】
観音湯
●住所:富山県下新川郡入善町入膳5050-1
●TEL:0765-74-1126
●営業時間:14:00~23:00
●定休日:水曜日
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