日比谷線「三ノ輪」駅で降り、土手通りをスカイツリーに向かって歩くこと約10分。「吉原大門」交差点にほど近い「湯どんぶり栄湯」を訪ねた。
同店は石川県出身の初代が戦後まもなくこの地に創業し、現在は3代目の梅田清治郎さんご夫婦とお母さんの3人、清掃スタッフ5人で切り盛りしている。立派な店構えのビル型銭湯だが、このビルに建て替えたのは60年前とかなり早い。さらに、太陽熱で井戸水を温めるソーラーシステムを約40年ほど前に取り入れるなど、先進的な取り組みを行ってきたことで知られている。
一風変わった屋号については「以前はただの “栄湯” だったのですが、平成7年に改装する際にインパクトがある屋号にしようということで、“湯どんぶり” と付けました。丼物にもいろいろな種類があるように、うちには “いろいろなお風呂がありますよ” という意味です。今は “どんぶり湯” って呼ぶお客さんもいますね(笑)」と清治郎さん。
さて、午後2時の開店時間。店の前には大勢の常連さんが、開店を今や遅しと待ち構えていた。シャッターが開き、常連さんに続いて浴室に入ると、カランはほぼ満員状態だ。入口脇にサウナ、男女の仕切り壁際に沿って大きな水風呂、ジェット・座風呂・ミクロバイブラ・電気風呂・寝風呂を備えた大浴槽、少し離れて薬湯と続く。
こちらの売りの一つが、「超軟水」と名付けられたこだわりの湯。浴室内はカランも湯船もすべて硬度成分(カルシウム・鉄分・マンガン)を除去した軟水が使われているのだが、触ったその感触がすごい。ヌルヌルでいかにも肌によさそうだ。ところがこのヌルヌル、不思議なことにお湯からあがって体をふくと、肌がサラサラ・ツルツルになり気持ちいい。また、9月下旬には水に分子振動を与えることで保湿・浸透作用を増した「ナノテク水」も導入している。「ナノテク水」+「超軟水」の効果をぜひ体験してみてほしい。
ところで、下町の銭湯というとお湯が熱いというイメージがあるのだが、こちらのお湯はぬるめなので、家族連れでも安心だ。どのジェットの噴出も勢いがよく、電気風呂の効きも申し分ない。薬湯は基本的には、よい香りがする漢方の宝寿湯なのだが、時折「鳴子の硫黄泉」や「ひのき湯」などのイベント湯も実施して好評を得ている。浴室に人は多いが、長居をする人は少ないようで、常にお客さんが出入りしており、繁盛している様子がうかがえる。100℃前後の高温に設定されているドライサウナも、テレビが楽しめることもあって好評だ。
同店の客層は幅広い。常連の高齢者をはじめ、周辺にマンションが続々とできていることから、週末は家族連れも多い。さらに海外からのバックパッカー向けのホテルが付近に多いことから、外国人客もやってくる。取材時にもヨーロッパ系の外国人客を見かけたのだが、ホテルのオーナーの紹介で来ることも多いとか。
なお、毎週月、木、金、土、日は、同店のフロント前の階段から上がる2階でマッサージを営業中(日曜日は第2・第4のみ営業)。金曜日には女性セラピストによるアロママッサージとヘッドスパも行われている。お湯で温まった体がマッサージでほぐれたら、癒し効果も一層高まりそうだ。
こだわりのお湯で人気の同店だが、実は8月よりリニューアル工事を始めている。「ナノテク水」の導入もその一環なのだが、なんと大規模な露天風呂の設置をはじめ、ガラリと装いが変わりそうだ。11月末からは3週間程休業し、12月中旬にリニューアルオープンする予定とのこと。新旧の「湯どんぶり栄湯」を比べるためにも、ぜひ一度休業前の来訪をおすすめしたい。
三ノ輪駅からは台東区循環バスの「めぐりん」(料金100円)に乗って、2つ目のバス停「吉原大門」で降りればすぐだが、土手通りを正面に東京スカイツリーを見ながら歩いても10分ほど。周辺には「明日のジョー」とのタイアップで知られる「いろは会商店街」、「土手の伊勢屋」「桜鍋の中江」といった老舗、吉原大門の「見返り柳の碑」、「一葉記念館」といった下町情緒や歴史を感じさせる観光スポットが多数あるので、休日の散歩ついでにぶらりと立ち寄ってみては。
(写真・文:編集部)
【DATA】
湯どんぶり栄湯(台東区|三ノ輪駅)
●銭湯お遍路番号:台東区16番
●住所:台東区日本堤1-4-5
●TEL:03-3875-2885
●営業時間:14~24時(日曜、祝日は12時から営業)
●定休日:水曜
●交通:東京メトロ日比谷線「三ノ輪」駅下車、徒歩10分
●ホームページ:http://sakaeyu.com
銭湯マップはこちら
※記事の内容は掲載時の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますので、予め御了承ください。