東京都墨田区東向島。東武スカイツリーラインで浅草駅から約8分。東向島駅周辺には地元に愛されるパン屋さんや、小さな八百屋さん、お弁当屋さん。駅から少し歩けば隅田川が流れ、江戸から続く歴史ある都立庭園「向島百花園」など、東京23区内でありながら、どこかのんびりとした空気が漂う町だ。
そんな「東向島」には、銭湯・サウナ好きから熱い視線を注がれる「寺島浴場」がある。すでにご存じの方も多いとは思うが、未訪の方がいらっしゃれば、ぜひとも一度は足を運んでみてほしい。おそらく一度味わえば、必ずや再び行きたくなる、そんな中毒性のあるサウナと、いつまでも入っていたくなる心地良いお風呂が待っているのだ。
海の中にいるかのような、心地良い青の浴室
東向島駅から徒歩4~5分。町に溶け込むマンション型の銭湯。現在、切り盛りするのは3代目の渡辺敏男さん。
2020年のリニューアルで、本格派のフィンランド製ストーブ付きサウナが登場。浴室内には、程よい刺激のバイブラの白湯、寝そべって入れるジェットバス、水風呂、そしてバイブラなしのあつ湯。奥の扉を隔てた先には森林風呂がある。浴室の壁は深い青色のタイルが下から上に向かって淡いブルーのグラデーションになっている。湯船につかりながら天井の高い浴室の壁をぼーっと見上げていると、なんだか海の底にいるような気持ちになる。
古き良き銭湯ながらも清潔に保たれた浴室、こだわりのサウナ、サウナハットをかけるポールハンガーや荷物置き。そしてサウナから出てすぐのシャワーには、ミストが気持ちいい「ミラブル」のシャワーヘッドまで備え付け。
サウナがものすごい! にとどまらず、細やかな気遣いが随所に見られ、あればうれしいものが浴室内にもしっかり備わった、「かゆいところに手が届く」銭湯なのである。
「ただいま」と言いたくなる森林風呂
先述の「森林風呂」は、昔ながらの「森林芳香浴」のできる浴室だ。白湯やジェットバスのある浴室からドア1枚隔てた空間にあり、1歩足を踏み入れるとなんだか「おばあちゃんちに来たような懐かしさ」を感じる森の香りに包まれる。リアルな自然の森の香りというよりは、針葉樹の植物精油から人工的に精製された、なんだか妙にほっとする香りなのである。
サウナ・水風呂・休憩のあと、少しぬるめの森林風呂につかっていると、いつまでもここに浮かんでいたくなる、そんな気持ち良さを感じる。ここに入るためだけにまた来たくなる、やさしさと居心地の良さを感じる森林風呂だ。
セルフロウリュができる、110℃の灼熱サウナがお出迎え!
お風呂の気持ち良さはもちろんのこと、寺島浴場といえば、一時「ヤバ島」としても話題になった、そのヤバすぎる熱さのサウナの素晴らしさを皆さまに知っていただきたい。
2020年にリニューアル、2021年4月にも一部改装され、室内が3段式になったサウナ。男女ともに最大4人ほどのコンパクトなサウナ室には、ややオーバースペックともいえるサウナストーブが鎮座する。このフィンランドのMISA社製の「MISAストーブ」は、セルフロウリュができる本格派。スーパー銭湯やサウナ専用施設ではなく、公衆浴場である都内の銭湯で、セルフロウリュができるのは、とても希少な存在だ。
サウナの温度やセッティング、ととのいの導線などに並々ならぬこだわりを持つ渡辺さんは、サウナも水風呂も、その他の設備も、男女浴室の仕様はほぼ同じ。サウナの温度は、なんと男女ともに110℃! タイミングによっては120℃を超える衝撃の熱さの時も!
ストーブは明らかにこのサウナ室には大きく、室内に足を踏み入れた瞬間、ものすごい灼熱に包まれる。ロウリュをしなくても十分すぎるぐらいに熱いが、フィンランド製のラドル(ひしゃく)でアロマロウリュをすれば、ぶわっとさらなる灼熱と熱風の勢いに、また気持ち良く汗が噴き出るのだ。正直、顔や胸元はタオルで覆って守ったほうがよいくらいの熱さなのである。
ちなみにサウナ内の桶にはケミトロン社のアロマが入っており、香りは週替わり。下町の銭湯のサウナで、人気アロマのブラックフォレストや、白樺の香りに包まれながらサウナに入れるぜいたくさたるや……! アロマの種類の表示はないので、気になる方はフロントで渡辺さんにお尋ねを。
コンパクトなサウナ室ながら、1段目、2段目、3段目でかなり熱の感じ方が違うのでまずはセットごとに段を変えて楽しんでほしい。リニューアル時に窓が大きくきれいになったため、一番上に座ると浴室全体を見渡せるが、ロウリュをした時の熱さたるや尋常ではない。熱さと湿度の灼熱具合で言えば、都内でも最強のサウナの一つといえるだろう。
そして流れるのは懐かしの昭和歌謡曲やJポップ。思わず口ずさみたくなる名曲の数々は、有線のA50チャンネルのものだそう。ちなみに木曜・金曜はジャズミュージック。BGMが変わるだけでサウナの雰囲気まで違うように感じられる。ぜひ曜日を変えて訪れてほしい。
入るたびに衝撃的なガツンとくる熱さと、気持ちの良い湿度、ほっとするようなBGM。通えば通うほど、病みつきになってしまう中毒性がある。
短時間でガツンとととのいたいときは3段目、安定して気持ち良くサウナに入りたい場合は2段目(もちろんたいていの都内の女子サウナより格段に熱い)、いつもよりのんびりじっくり入りたいときは1段目……と、その時の気分で段差を使い分けてみるのもおすすめだ。(後編に続く)
(写真・文:銭湯ライター 林田紗央莉)
【DATA】
寺島浴場(墨田区|東向島駅)
●銭湯お遍路番号:墨田区 7番
●住所:墨田区東向島6-34-18(銭湯マップはこちら)
●TEL:03-3611-6755
●営業時間:水曜・木曜・金曜 16~23時、土曜・日曜 15~23時
●定休日:月曜、火曜
●交通:東武伊勢崎線「東向島」駅より徒歩3分
●ホームページ:http://www.terajima-yokujo.com
●Twitter:@terajimayokujo
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