あまりにポイントが多すぎて、一回では攻略しきれない銭湯

「一言でいうなら、一回行っただけでは攻略しきれないくらい注目ポイントが大量なお風呂屋さん!」
「ナニソレスグイキタイ!」
友人から江東区・辰巳湯さんの話を聞いた時、ワクワクし過ぎて思わず声が裏返ってしまいました。

はやる気持ちをおさえてお邪魔した辰巳湯さんは、東京メトロ半蔵門線・大江戸線の「清澄白河駅」から歩いて2〜3分のアクセス抜群の場所にあります。清澄庭園のすぐ東側に位置し、庭園散策後の入浴も気持ちよさそうです。

初めてお邪魔した時は夜18時くらいだったのですが、白い四角い建物の、入り口がある外壁全体に青色と白色のLEDの電飾で富士山のシルエットがきらきらと輝いていました。この富士山は、看板が小さく目立たないため、お客様に気づいてもらえるように始めたものだそうで、常時光っていると、辰巳湯さんの店内の業務を担当している高野さんが教えてくださいました。


清澄白河の夜に浮かび上がる富士山


入り口から男湯・女湯に分かれるスタイル


入り口タタキのタイルがかわいらしい

辰巳湯さんは、男湯と女湯で異なるポイントがあります。脱衣場は女湯のほうが1.5倍くらいの広さがある一方で、男湯は最近耐震補強工事をしたため、室内に大きな鉄柱がクロスしていて、インダストリアルな空気感になっていますが、室内は白を基調としていて、床のフローリングの明るさと、外から差し込む日光のおかげか、とても開放的な明るい雰囲気です。


広々とした女湯脱衣場


明るい雰囲気の男湯脱衣場

白タイルを基調とした明るい浴室内は、広々とした大きめの浴槽が目の前に広がり、その三方を囲むようにカランが並んでいます。浴槽はゆるやかに区切られ、奥の壁に沿ってジェット風呂、電気風呂、寝湯を設置。隅に置かれた観葉植物が、無機質になりがちなタイル貼りの浴室にうるおいを与えています。浴室の主役はなんといっても壁一面に広がる浮世絵をモチーフにしたモザイクタイル絵だと思います。主浴槽につかりながら眺めると、富嶽三十六景からインスピレーションを得た図柄が視界いっぱいに広がり、まるで自分が浮世絵の世界に飛び込んだかのような没入感…。まるでIMAX映画館のようです。


女湯側:凱風快晴と甲州石班澤


ゆったりした空間に大きな浴槽


男湯側:深川万年橋下をモチーフに


壁に沿って電気風呂、ジェットバス等が並ぶ

サウナは、形状は異なりますが男湯・女湯ともに6人は入れる広さで、ヴィヒタが吊るされています。水風呂は露天スペースにあります。最初にお邪魔した時、露天風呂のドアを開けて一歩踏み出したらそこは水風呂だったので度肝を抜かれました。お湯の露天風呂ももちろんあります!


女湯サウナはテレビあり


男湯サウナは奥行があり、最上段には椅子


入り口にヴィヒタ水とサウナマット

露天スペースの先の休憩スペースは辰巳湯さんの真骨頂

もしかすると、露天スペースの先に広がる空間が辰巳湯さんの真骨頂かもしれません。マット敷きの床と天井に焦茶色の梁がめぐらされた休憩スペースは、女湯のほうはなんともいえない実家感。男湯のほうは両側の壁に設置された本棚に漫画が並べられて、秘密基地、もしくは隠れ家のようです。いずれも休憩用のととのい椅子と大型テレビが設置されていて、ゆっくり休憩ができます。

そして、この休憩スペースで真っ先に目に飛び込んでくるのは、梁の上にびっしりと並べられた大量の白い小さなぬいぐるみ。高野さんに「あれは何ですか?」と訊くと、「あれ、実はタオルなんです。元々は、販売しているタオルをお客様が入浴後に置いていかれるので、それがもったいないなあと思って、何かできないかと作り始めたんですが、気づいたら大量に……。お子さんが隠れキャラ発見! みたいな感じで楽しんでくれるといいなあと思って作り始めたんですが」と教えてくれました。現在、総数1000体は越えているそうで、全く隠れておらず、休憩所を覗くと真っ先に目に飛び込んできます。そのインパクト、ぜひご自身で体験してください!!


圧巻の休憩所のぬいぐるみ


女湯休憩所:露天風呂からテレビが観られる配置


男湯休憩所:この椅子の配置、最高ですよね

お子さんをはじめ、ご家族みんなで楽しめるような銭湯にしたい

休憩所のタオルを利用したぬいぐるみしかり、辰巳湯さんはお子さんが銭湯を楽しめるような工夫をたくさんしています。小学生以下のお子さんには、フロントでお菓子をプレゼントしたり、季節ごとに脱衣場や休憩所をデコレーションしたり、脱衣場や休憩所のたくさんの漫画が好きなだけ読めたり。
もちろん子供だけでなく、かつて子供だった大人も童心にかえって楽しめる、テーマパークのような空間だなと思います。男女共有のロビーがないため、お客さんは外で待ち合わせるそうで、「主人が出てこないんで呼んでもらえますか」なんて奥さんからフロントに声がかかって、男湯側に目をやると、旦那さんは脱衣場でテレビや漫画に夢中……みたいなこともあるそうです。


どのお菓子を選ぶか、悩ましい


女湯の休憩スペースは照明もかわいい

個人的には今まで銭湯のお風呂に入ると「気持ちいいな」と感じることが圧倒的に多かったのですが、辰巳湯さんでは「気持ちよさ」と同じくらい「楽しさ」も感じられて、いつも湯上がりに感じるほっとしたリラックス感に加えて、なんだかとても元気になれて、スキップしながら帰りたい気分でした(とはいえ大人なので、普通に歩いて帰りました)。

文章だけではとても伝えきれない、辰巳湯さんのたくさんの注目ポイントをぜひ実際に体験していただきたいです。また、辰巳湯さんのはす向かいには行列のできる有名な街中華「桃太楼」さんがあります。至近距離に見応え抜群の江東区深川江戸資料館や前述の清澄庭園があり、またおしゃれなカフェも点在しているため、お風呂前後の街歩きも楽しめそうです。次のお休みには、一人で、二人で、あるいはご家族みんなで、辰巳湯さんを訪れてみませんか?
(写真・文:銭湯ライター 山口安代


【DATA】
辰巳湯(江東区|清澄白河駅)
●銭湯お遍路番号:江東区 4番
●住所:江東区三好1-2-3(銭湯マップはこちら
●TEL:03-3641-9436
●営業時間:14~24時/土曜・日曜11~24時(いずれも最終入場23時半)
●定休日:月曜(祝日は営業。翌火曜も営業)
●交通:都営大江戸線・「清澄白河」駅下車、徒歩2分
●ホームページ:http://www.maroon.dti.ne.jp/tatsumi/index.html
●Instagram:tatsumi_yu_koutouku

※記事の内容は掲載時の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。


女湯脱衣場の辰巳湯地蔵。磨くとご利益が


口どけスッキリが人気の牛乳アイスモナカ


男湯には水風呂に入れる専用氷が!


水風呂で頭から水をかぶる桶を設置(男湯のみ)


女湯脱衣場に用意された冷たいおしぼり


無料のフットマッサージャー


タオルなどオリジナルグッズも販売中


桃太楼さん外観


チャーハンとラーメンが人気。おいしい!