今回訪ねたのは田無駅から徒歩7分ほどの場所にある「松の湯」。高い建物の少ない郊外らしい風景の住宅街を進んでいくと、ちょっとした商店街のようになっていて、松の湯はその中心に位置している。通りに面して建っているので、わかりやすい。
建物は懐かしい雰囲気が漂う木造銭湯。入り口にはのぼりがはためき、手作りの告知板には、営業時間や日替わり湯といった情報のほか、インスタグラムのアカウントも表示されている。昔ながらの銭湯だが、時代に即したPRも取り入れている点に経営者の意欲が垣間見える。
建物は昭和29(1954)年の建築で、半世紀以上経つものの、中普請され手入れも行き届いているので古さは感じない。現在、お店は中山勝春さん、由紀子さん、理津子さんの3人兄妹が切り盛りする。元々経営していたご両親が亡くなられた際に廃業も考えたが、3人で力を合わせて店を続けることにしたそうだ。
さて、入り口ののれんをくぐった先の玄関には、手作りの飾り付けがいっぱい! クリスマスや節分といった季節のイベントをモチーフにした飾り付けを、定期的に入れ替えれているとのこと。ちなみに取材にうかがった日に飾られていたのは「桜」。あれっ、今は真夏ですが……? 「ちょっと切り替えが遅れてます(笑)」と由紀子さん。
ロビーには、ソファーが置かれてゆっくり休憩できる。こちらにも手作りの飾り付けやポップが飾られていて、まるで知り合いの家の居間にお邪魔しているよう。湯上がりには、つい長居してしまいそうな雰囲気だ。ロビーや脱衣場の天井は高く、高窓から太陽の光が明るく室内を照らす。採光性は抜群で、開放感も心地よい。
浴室に入るとまず目に入るのは、女性ペンキ絵師・田中みずきさんが描いた赤富士。黄色の空に赤く染まった富士山がよく映える。
そのペンキ絵の下には座風呂、バイブラ、薬湯、水風呂が並ぶ。薬湯は日替わりだそうで、この日はヒアルロン酸。紺色に染まったお湯が涼しげで暑い季節は人気がありそうだ。また、サウナはうれしいことに無料だ。
さて、「薪で沸かしたお湯はやわらかい」と時折耳にする。松の湯も井戸水を薪で沸かしているが、鈍感な筆者にはガスで沸かしたお湯との違いは正直よくわからない。違いはわからないが、この日つかったお湯はやわらかで肌になじみ、温度も熱すぎず心地よい。ジェットの勢いも申し分なし。やがて体がほてったところで水風呂へ入り直す。真夏の蒸し暑さを忘れる至福の一時だ。
入浴後「どんな銭湯にしていきたいですか」という筆者の質問に、「いろいろ充実した設備の入浴施設が増えているけど、うちは昔ながらの町のお風呂屋さんでいいかな」と由紀子さん。その言葉通り、松の湯はシンプルな設備のお風呂屋さんだが、手作りの飾り付けやポップ、そしてなぜか巣鴨の赤パンが販売されていたり、経営者の個性が店内いたるところに感じられる、心温まる銭湯だ。
ちなみに西東京市の4軒の銭湯では毎月「薬湯の日」が定められていて、漢方薬の湯が楽しめる。この日は保護者同伴の場合、小学生以下は無料となる。実施日は松の湯のインスタグラム(matunoyu0424610312/)を参照。
(写真・文:編集部)
【DATA】
松の湯(西東京市|田無駅)
●銭湯お遍路番号:西東京市 4番
●住所:西東京市南町1-13-11
●TEL:042-461-0312
●営業時間:14時半~24時
●定休日:不定休(月に2、3回水曜が休みになることが多い)
●交通:西武新宿線「田無」駅下車、徒歩7分
●ホームページ:–
instagram:matunoyu0424610312/
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