西武新宿線「野方駅」と「都立家政駅」のほぼ中間にある「たからゆ」。野方駅から商店街を抜けると閑静な住宅街が広がり、7分ほど歩いたところで突如として現れる。まず見逃すことはない佇まいである。

創業は1949(昭和24)年、今年でなんと75周年。初代が作った銭湯を2代目がビル型の銭湯に建て替え、3代目が2023年10月にリニューアルした。

以前は塀と樹木によって入り口がわかりづらく、無機質な感じもあったが、壁面の塗装と木材のフレームを使用したことで温かみを感じる玄関に。また、天女と龍がデザインされたのれんは、屋号との相性もよく、縁起の良い雰囲気を醸し出している。


リニューアル以前のたからゆ

リニューアルしてまだ半年ほどなので、すべてがとにかくきれいなことはもちろん、清掃も行き届いている。浴室のタイルは日本の伝統模様である市松模様。視覚的にも楽しいし、天女と同様に縁起の良さを感じさせる。これは店主の趣味が「神社巡り」というところも影響しているのではないだろうか。

飲用にも適した地下水を高純度の軟水にしているというお湯は、とても滑らかで心地いい。

湯船は3種。高濃度炭酸泉がちょっとぬるめの38℃、2種類のジェット座風呂、外気浴エリアにあるシルキー露天風呂は42℃弱とほどよい設定。

この3つの湯船だけでも十分癒されるが、さらに各浴室に設置された種類の異なる2つのサウナも人気だ。オートロウリュサウナとコンフォートサウナがあり、いずれも100℃近い温度設定。毎月1日に男女の浴室を入れ替えるため、両方のサウナが楽しめるのがうれしい。今回、筆者はコンフォートサウナに入ったが、しっかり熱い「バーニングサウナ」で、サウナ上級者もこの刺激なら満足できるのではないだろうか。


蒸気でしっかり蒸されるオートロウリュサウナ


遠赤外線で熱するコンフォートサウナ

この2つのサウナをさらに盛り上げるのが熱波師によるアウフグースで、サウナーなら血潮がたぎること間違いなし。取材当日の担当はプロ熱波師コンビ、いずちゃんと、ラブリーともちゃん。なんと仙台から来たという。たからゆのSNS(X(旧Twitter)Instagram)では熱波師のスケジュールが確認できるので、ぜひチェックしてみてほしい。


本番前に練習中のプロ熱波師

そして、サウナの後に控えているのが、バイブラの効いた「高濃度バドガシュタイン鉱石による超軟水のラドン泉水風呂」(約16℃)。重厚感のあるネーミングとは裏腹に、なめらかな肌触りで、これまた人気である。なお、サウナは時間帯によっては順番待ちがあるので、ご注意を。


人気のラドン泉水風呂

さて、こんなに魅力的な銭湯を作り上げた店主は、きっとイケイケで情熱にあふれた方だろうと思っていたが、実際にお会いした店主の関本さんは、物腰がやわらかくまるで恵比寿様のような方だった。

たからゆのホームページには、その関本さんのリニューアルへの思いが掲載されているが、そこには銭湯経営者らしい力強くも温かい言葉が綴られている。

リニューアルへの想い

私が子供の頃、野方都立家政地域には約10軒の銭湯がありました。高度成長期を
過ぎ時代の流れとともに減っていく寂しさと経営の厳しさの間の中に悩みましたが、
この地域に最後に残った銭湯としてまだまだお役目があると思いリニューアルを決断
いたしました。

癒しと心の豊かさが必要な時代にお客様に喜んでいただけるコミュニティとしてご利
用いただければ幸いでございます。ご来店心よりお待ちしております。

たからゆ店主

リニューアル後は若い人も来るようになったということで、サービス内容も若いスタッフの意見を柔軟に取り入れながら、どんどん変えていっているとのこと。

例えば、アメニティ。女湯にはシャンプーとコンディショナーをそれぞれ設置し、化粧水はもちろんフェイスマスクも無料。さらにシャワーヘッドもドライヤーも高級ブランドのReFa(リファ)を導入しているこだわりよう。ロビーにはソフトクリーム、生ビール、軽食など、フードもドリンクも盛りだくさん。さらには占いのイベントなどもやっているという。


女湯はシャンプーとコンディショナーを設置


ReFaのファインバブルのシャワーヘッド


Refaのドライヤーと、フェイスマスク

最近は、店の前の壁を取り払ったことで駐車場とつながり、より明るく開けた空間に。屋外でもイベントができそうだな〜と思っていたら、キッチンカーを呼んだり、屋外サウナイベントなどをすでに計画しているとのこと。さらに、店主いわく「映えスポットにしたい」とのことで玄関前をさらにバージョンアップさせるそうだ。いやはや、イケイケな恵比寿様でした。

まだまだ進化の途中ということで、今後のたからゆにぜひ注目してほしい。イベント情報などもこまめにSNSを更新しているので、ぜひフォローを!
(写真・文:編集部)


【DATA】
たからゆ(中野区|野方駅)
●銭湯お遍路番号:中野区 2番
●住所:中野区若宮1-49-1(銭湯マップはこちら
●TEL: 03-3330-4126
●営業時間:13~24時
●定休日:月曜(祝日の場合は、翌火曜休業)
●交通:中央線「野方」駅下車、徒歩7分
●ホームページ:https://takarayu.com/
●X(旧Twitter):@takarayu_nakano
●Instagram:takarayu_nakano

※記事の内容は掲載時の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますので、予め御了承ください。


湯上がりは生キャラメルアイスとゆっポくんの水で


ロビーの傍らには、軽食がつまった冷凍庫を用意


湯上がりにうれしい軽食。筆者はダイエット中のためぐっと我慢

持ち込みドリンク用の冷蔵庫。
※ここにビールを入れてはダメです。ロビーで生ビールを


筆者も神社巡りしてますが、店主はガチ勢でした

番外編 ~街歩き~


本屋があるだけでノスタルジーを感じる時代に


無人の古着屋で有名な「ムジンノフクヤ」。1号店は野方


野方文化マーケット


ユネスコには昭和遺産の保護もお願いしたい


その筋では有名な古物買い取り販売店、
ブックマート都立家政店