銭湯が多いことで知られる大田区。京浜急行・京急蒲田駅~六郷土手駅間も特色ある銭湯がひしめいているが、今回はそのほぼ中間の雑色駅のそばにある「隆の湯」を訪ねた。
近年、京浜急行線の高架化に伴い真新しくなった雑色駅を出ると、アーケードの商店街につながる。アーケードの先にもさまざまな商店が連なり、いかにも下町商店街らしい賑わいを見せている。隆の湯はそんな商店街からちょっと外れたところにあるビル銭湯で、駅からは徒歩2分ほど。入り口のガラスに「ゆ」と大きく描かれているのでわかりやすい。
創業は昭和25(1950)年。当初は木造の建物だったが、昭和46(1971)年に現在のビルに建て直した。当時はまだビル型の銭湯は珍しかったそうだが、収益の多角化を考えてマンションを併設した銭湯を建てたとのこと。現在、店を切り盛りするのは、2代目の松本敏治さんご夫妻だ。
店内はビル銭湯とはいえ脱衣場も浴室も天井が高く、開放感がある。浴室に入って目を引くのは湯船の大きさ。20年前に行った中普請でカランの間隔を広げ、湯船の面積を広くしたとのことだが、壁に沿って配置された湯船の面積はかなり広い。
一番大きな湯船にはハイパワージェット、電気風呂、座風呂が並ぶ。ハイパワージェットはその名の通り強力なジェットが噴出するが、壁に掲げられた挿絵では、ジェットをお腹に当てている。背中に当てるのは気持ちいいが、お腹に当てるのはちょっと痛いのでは!? この大きな湯船にはお湯をきれいにするほか、遠赤外線で体を温める「備長炭」の入った箱も設置されている。湯船の中央に配置された丸い石からお湯が出ているのがユニークだ。
お湯は熱くもなくぬるくもない、ちょうどいい湯加減。壁のモザイクタイルに描かれた雄大な海辺の風景は、ちょっと珍しいかもしれない。
主浴槽の隣には、草津温泉の湯の花が投入される薬湯。こちらは少しぬるめでゆっくりつかることができ、白濁した湯で旅気分を味わえる。お湯がライオンの口から注がれるのは、経営者の遊び心が見えるようでちょっと楽しい。
水風呂は銭湯としてはかなり大きく、5~6人は入れそう。その向かいにあるサウナも同様に5~6人入れそうな広さだが、太っ腹なことに、なんと無料で利用できるのがうれしい。
「“ウリ”は特にない」とご主人は話すが、いやいや草津温泉の薬湯、無料のサウナ、大きな湯船といろいろあってリラックスできること間違いなし。中普請から20年ほど経つが、浴室も脱衣場も手入れと掃除が行き届いているので古さを感じさせない。脱衣場は営業中もこまめにモップがけをしているとのことで、気持ちよく利用できる。早い時間から結構な混みようで、銭湯激戦区にあってもしっかりと常連さんの心を掴んでいる。
(取材・文:編集部)
【DATA】
隆の湯(大田区|雑色駅)
●銭湯お遍路番号:大田区 3番
●住所:大田区仲六郷2-27-12
●TEL:03-3739-2644
●営業時間:15~24時
●定休日:土曜
●交通:京浜急行線「雑色」駅下車、徒歩2分
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