西武池袋線江古田駅。北口を出るとすぐに江古田浅間神社があり、徒歩2分で日本大学芸術学部のキャンパスにたどり着きます。この住宅地と学生街が折り重なる江古田の街並みに溶け込むように、浅間(せんげん)湯は店を構えています。

ビル銭湯の浅間湯ですが、歴史は古く、営業を始めたのは昭和2(1927)年。昭和58(1983)年に建て替えを行い、今の姿になったとのこと。現在の店主・山田浩康さんの祖父の代に始まり、すでに90年以上の歴史がある銭湯なのです。

客層の多くは近隣にお住まいの方々。以前は下宿している学生さんの割合も多かったとのことですが、最近は家に風呂はついていても、やはり大きなお風呂で一日の疲れを取りたい、という方の割合が増えているようです。休日にはお子さんと一緒にお風呂を楽しむ家族連れも多いとか。

そんな浅間湯さん、浴室に入って最初に目に入るのが、壁の鮮やかなモザイク画。一般的な銭湯であれば富士山などの風景がペンキで描かれているのですが、浅間湯さんでは男女の浴室に連なる形で、タイルを用いた抽象画が描かれています。先代が「どうせならユニークな壁画にしたい」との思いから、芸大の先生にデザインを依頼し、この壁画が作られたとのこと。テーマはずばり「家族愛」。地域に親しまれている浅間湯さんにぴったりですね!

男女の浴室をまたぐタイル

タイル絵のテーマは「家族愛」

肝心のお湯は、鉄分豊富な地下水を使用しており、短時間で体の芯まで温まり、冬場は湯冷めもしづらいので、冷え性の女性にもオススメです。お湯の温度自体が高めの43℃に設定されていることも特徴で、夏場はしっかりと汗をかくことで、風呂上がりがスッキリとなることでしょう。2つの湯船にはジェットバスとバイブラがそれぞれ備わっているので、その日の気分で使い分けてみるのもよいのではないでしょうか。

ジェットとバイブラ、2つの湯船

お湯の温度は高めに設定

サウナは5人程度まで入ることができるサイズで、温度設定も90℃前後と絶妙。テレビやラジオといった音が鳴るものは一切置かない硬派な作りで、サウナにゆっくり入ってリラックスをしたいという方にぴったりです。

5人程度入れるサウナ

サウナ後の水風呂は、地下水を汲み上げたものを一度屋上の貯水槽にためて利用しています。サイズとしては小ぶりで、夏場はぬるめになりがちですが、裏を返せばゆっくりまったり入ることができるともいえます。その一方で、冬場となれば、キンキンに冷えた水風呂が味わえるため、サウナ好きの常連さんは冬が待ち遠しいはず。

もう一つの浅間湯さんの特徴が、入り口にどっしりと構えている大きな「たぬき」の置物。もともとは近隣に住んでいた大学の先生の庭に飾られていたもので、海外に引っ越しをされる際に先々代の店主へ寄贈されたそうです。すでに70年近くも、浅間湯さんとともに歴史を歩んできたマスコット的な存在なのです。

そしてもう一体のたぬきが休憩スペースにも。こちらは剥製なのですが、別のお風呂屋さんの店主から猟の獲物を一頭まるごとプレゼントされたもの。手ぬぐいを持つ姿が非常に可愛く、休憩中にも自然と目が行ってしまいます。さらにさらに、この銭湯の2階のレンタルスタジオの名前も「ラクーン」と、まさにたぬきづくしの浅間湯さんなのです。

たぬきが入り口でお出迎え

店内には剥製のたぬきも

店主の山田浩康さんからのコメント
「自分が子どもの頃は両親に連れられて銭湯に行くというのが日常でしたが、最近はそもそも銭湯に入ったことがないという方も多いですよね。大きな湯船につかることの気持ちよさを、まずは楽しんでもらえたら嬉しいです。ぜひお気軽に浅間湯に足を運んでください」
(写真・文:銭湯ライター:中山英樹


【DATA】
浅間湯(練馬区|江古田駅)
●銭湯お遍路番号:練馬区 17番
●住所:練馬区栄町38−3
●TEL:03-3991-2406
●営業時間:16~23時50分
●定休日:金曜
●交通:池袋西武線「江古田」駅下車、徒歩2分
●ホームページ:–
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