サブカル関連のイメージが強い中野駅周辺だが、北口方面は再開発で大学や企業のビルが建ち並び、だいぶ雰囲気が変わった。今回は、そんな駅の北側とは対照的な、南側の住宅街にある「香藤湯」を訪ねた。
中野駅南口を出て右手の住宅街にある「桃園通り」を進む。桃園とはしゃれた名前だが、その由来は古い。徳川5代将軍綱吉が設けた犬屋敷の跡地に8代将軍吉宗が桃を植えさせて桃の花の名所となったことが始まりで、昭和40年代まで桃園町という町名もあった。かつての町名がついた「囲(かこい)桃園公園」を通り過ぎ、中野駅から徒歩7分ほどで香藤湯に到着。
「最寄り駅はJR中野駅なんですけど、住所が杉並区高円寺南なもんだから、たまに "高円寺駅からどうやって行くんですか?"って問い合わせがあります。説明するとかなり遠いから驚かれますね(笑)」と話すのは、ご主人の伊藤吉郎さん。この道50年のベテランだ。
香藤湯の歴史は古い。創業は大正12(1923)年で、戦前は第六香藤湯という屋号だったそうだ。現在の建物は昭和43(1968)年に建てられたもの。平成3(1991)年に中普請を行った際に、現在のモダンな外観となった。
脱衣場も浴室も天井が高い、昔ながらの東京銭湯の造りで、開放感があって気持ちがよい。中普請から20年以上経つというのが信じられないほど、どこもよく手入れが行き届いて清潔感がある。
浴室に足を踏み入れると、正面の壁に男女の浴室をまたいで巨大なペンキ絵の富士山が描かれているので、高い天井と相まって浴室を広々と感じさせる。ペンキ絵の下には湯船が2つ。大きいほうは浅めで傍らにバイブラを設置。小さいほうはジェットが噴出する水枕付きの座風呂だ。
「ジェットなんかの設備は家庭風呂でも取り入れられるかもしれないけど、お湯がたっぷり入った大きな湯船は銭湯ならでは。手足を伸ばしてリラックスしてもらえれば」とご主人が話すように、仕切りのない大きな湯船にゆったりとつかると気持ちがよい。お湯の温度は42℃ほどで筆者にはちょうどいい熱さ。ご主人曰く「熱いと思ったら水でうめてください。機械が自動で温度調整するので、じきに元の温度に戻りますから」とのことなので、暑いお湯が苦手な子どもでも安心だ。
浴室の入り口脇にはサウナがあって、その傍らには水風呂も設置されている。夏場は最後に水風呂で締めて上がると、さっぱりして気持ちいい。
さて、こちらの名物としてあげられるのが、昔ながらの木桶。浴室に響く「コーン」という独特の音がいかにも銭湯らしく、風情たっぷり。使い終わったら、カランのお湯で汚れを流してから元の置き場所へ戻そう。
シンプルな設備の小ぢんまりした銭湯ながら、掃除が行き届き、清潔感があって心地よい香藤湯。深夜1時まで営業しているのもありがたい。
(写真・文:編集部)
【DATA】
香藤湯(杉並区|中野駅)
●銭湯お遍路番号:杉並区 26番
●住所:杉並区高円寺南5-1-7
●TEL:03-3316-4514
●営業時間:16~25時
●定休日:金曜
●交通:中央線「中野」駅下車、徒歩7分
●ホームページ:http://sentou.jp/map/1-08.html
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