東京メトロ東西線「南砂町」駅から徒歩15分、もしくは「東陽町」駅からバスに乗り「袖ヶ浦」バス停で降りれば徒歩2分。荒川のほとりにたたずむ不二の湯さんにお邪魔しました。荒川土手からほんの徒歩2~3分なので、ジョギングやサイクリングで汗を流した後、不二の湯さんでお湯をいただいても気持ちよさそうだなあ、なんてことを思いながらのれんをくぐると、目の前に衝立のような傘立てがあり、左右に下駄箱、そしてその奥にフロントがありました。
フロントにはかわいすぎる看板犬のプードルちゃんが3匹。お父さん犬のフクちゃんと、その娘のらぶちゃん、そらちゃんがにぎやかにお出迎えしてくれました。女将さんの内田芳子さんによると、なぜか主に男性のお客様に、歓迎の意味で吠えるのだとか。そんなお話を聞いてしまったら、吠えられないとなんだか少し物足りない気分に……。でも、うるうるした真ん丸の黒い瞳に見つめられると、そんなことはどうでもよくなってしまいます。どうやら私だけではないらしく、看板犬たちに会えるのを楽しみにしている常連さんも多いそうです。
不二の湯さんは創業90年の歴史を誇る銭湯。顔が映りそうなくらい磨きこまれたつやつやに光る床や、浴室と脱衣場の中心に位置する大黒柱を見上げると、そこに刻まれた時の流れに圧倒されます。脱衣場に入ると、女湯側は鏡の前に座り心地のよさそうな籐で編んだスツールが2脚。男湯側も同じく籐の背もたれ付き椅子とテーブルのセットが、湯上がりにゆっくりお庭が眺められる場所に設置してあります。いずれも使い込んだ風合いの艶が出ていて、「ゆっくりしていってね」といわれているような気持ちになります。
最先端のマッサージベッド(女湯)とフットマッサージャー(男湯)を設置! 一度は体験すべし
そのたたずまいのほっこり具合とは裏腹に、脱衣場には見るからに「最先端です!」という機械が設置してあります。「これは何ですか?」と質問したところ、最近(令和3年12月)導入したばかりのマッサージベッドの最新モデルとのこと。「お客さんにいい気持ちになってほしくて導入しました」とにっこり笑う女将さんに促されて、実際に私も体験させていただきました。わくわくしながらベッドに横たわり、膝から下を包むエアブーツを装着すると、空気圧によってひざ下全体をくまなくしっかりハンドマッサージされているような気持ちよさ……。一日の終わり、脚のむくみに効果抜群です。ベッドは背中全体が温熱式になっていてじんわり温かく、首・肩・背中・腰をローラーがまんべんなくマッサージしてくれます。あまりの気持ちよさに、意識が飛びかけました。20分間の至福の時間をおかわりしたいのを我慢して詳しく伺うと、フランスベッドの「スリーミーウェーブ3338」というマッサージ機で、動脈硬化・骨盤矯正などさまざまな健康効果があるとのこと。医療用器具として認められているスゴいベッドが一回300円で使用できます。これは湯上がりに絶対体験すべきです! 残念ながら男湯にはなく、女性だけの特権なのですが、男性の皆さんのためには、同じくフランスベッドの最新フットマッサージャーが設置されています。こちらは足全体に特化したマッサージ機で、足裏をマッサージするだけでなく、エアバッグが内蔵されていて、足の甲や側面を手でもまれているような気持ちよさです。しかもこちらはなんと無料!
浴室の壁中央には富士山がどーんと描かれ、その下は晴れた松島の風景でした。開放感あふれる、見ていて気持ちのよいペンキ絵です。ジェット水流が体を心地よく刺激してくれる円形の浴槽と、内部で区切られて超音波風呂、電気風呂やバイブラになっている四角い浴槽(こちらは薬湯で、土曜日以外毎日やっているそうです!)の2つがあり、どこに入るか迷ってしまいます。バイブラ風呂に設置された冷水枕に頭をあずけ、お湯の流れに身を任せるともう極楽……。一日の終わりの疲れた体にじわじわと染み入るような、いつまでも入っていたくなるお湯でした。しあわせすぎて脳内物質がいつもより多めに分泌された気がします。
湯上がりに髪の毛を乾かす際は、小窓からフロントにお願いすると、無料でドライヤーを貸し出していただけます。籐のスツールは思った通り、触り心地も座り心地も気持ちよいものでした。
全てはお客さんの喜ぶ笑顔のために。新しいお客さんに知ってもらう努力も
女将さんに「今後、不二の湯はどういう銭湯になっていきたいですか?」と質問したところ、「お掃除などの基本はもちろん、よりお客さんに喜んでもらえるように、また新しいお客さんにも認知してもらえるように、イベントなどを実施したいです。フリーマーケットとか、どうかなあと思っています」とキラキラした笑顔でおっしゃっていました。歴史のあるお店とフリーマーケットという組み合わせも面白いなあと思いましたし、若い人にも「こんな銭湯あったんだ」と知ってもらえる絶好のチャンスだと思います。
気持ちのよいお風呂はもちろんのこと、脱衣場の最新マッサージ機、隅々まで丁寧にきめ細かくお掃除された空間、長い歴史による威風堂々としつつも圧迫感のない、親しみやすいお店のたたずまい。さらに今後の不二の湯の展開について「楽しくてたまらない」という表情でいきいきと語ってくださった女将さん。何もかもがお客さんの喜ぶ笑顔のためなんだなあと思うとじーんとしました。「不二の湯」という名前に違わない、この世に二つとないオンリーワンの銭湯だなあと、しみじみ感動を噛みしめながら駅までの道のりをほかほかした体で歩きました。(写真・文:銭湯ライター 山口安代)
【DATA】
不二の湯(江東区|南砂町駅)
●銭湯お遍路番号:江東区 34番
●住所:江東区東砂8-20-16(銭湯マップはこちら)
●TEL:03-3644-1771
●営業時間:15~22時半
●定休日:月曜、水曜(変更の場合事前に告知)
●交通:東京メトロ東西線「南砂町」駅から徒歩15分/東京メトロ東西線「東陽町」駅からバス。「袖ヶ浦」バス停下車、徒歩2分
●ホームページ:http://koto-1010-sento.jp/
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