大田区といえば、黒湯温泉の銭湯がたくさんあることで知られている。その中でも1、2を争う黒湯の濃さを誇る「蒲田温泉」を訪ねた。
JR蒲田駅から徒歩約13分。京浜東北線と京浜急行線に挟まれた出村商店街を歩いていくと、赤い看板が見えてきた。インパクトがある入り口なので、わかりやすい。この蒲田温泉の歴史は古く、昭和12年に創業。黒湯温泉は創業以来の「売り」だ。以前は近所の病院から患者さんが蒲田温泉へ療養に来ていたというから、町の湯治場の役割も長らく務めてきた。現在の建物は昭和61年に建てられたもの。入浴料金は券売機で購入するシステムで、浴衣セットや手ぶらセットも用意されている。
入り口はフロント式で、ロビーは広く、完全分離の喫煙室や仮眠室(有料)もある。2階へ通じる階段には「大宴会場」の看板がかかっているのが気になるが、それは後のお楽しみ。早速、浴室へ向かう。
浴室は細長く、奥に黒湯とさら湯の湯船が2つずつ。午前10時の開店直後にもかかわらず、常連さんで結構な混みようだ。まずは黒湯へ向かい、手前のぬるいほう(42℃くらい)へ。お湯は本当に真っ黒で湯船の深さも形もわからないほどなので、つま先で探りながらつかる。「都内で1番黒いんじゃないかな」と4代目の島義之さんが話す黒湯だが、手のひらを湯につけてみると水面下3センチほどで、もう見えない! 驚きの濃さだ。泉質はナトリウム炭酸水素塩・塩化物鉱泉で、感触はなんとなくヌルヌルとしているが、湯上がりは肌がサラサラになる。神経痛、筋肉痛などにもよく効くそうで、療養に通う人も多いとのこと。
さて、今年1月、テレビ番組「マツコ&有吉の怒り新党」で “新・3大熱い銭湯” として、燕湯(台東区)、帝国湯(荒川区)と並んで紹介された蒲田温泉。奥の熱湯の湯船は45℃以上というから、風呂好きといえどもなかなかハードルが高い。覚悟を決めて入ってみると、熱いというよりも刺すような刺激が全身を包む。しかも、なぜか歯茎が痛い。ううう、長居は無理だ……。
水風呂で一旦体を冷やしてから、今度はさら湯の湯船へ。こちらは超音波&遠赤外線と、電気風呂付きのガリウム石温浴泉の2つに湯船が分かれている。こちらはいたって入りやすい温度でほっとする。周りを見渡せば、休憩を取りつつ湯船に出入りを繰り返すお客さんが複数いて、まさに湯治場の風情だ。
さて、メディアに取り上げられることが多い蒲田温泉だが、黒湯温泉と並ぶ、もう一つの売りが大宴会場だ。風呂から上がり、フロント脇の階段を2階へ上がると、舞台付きの大宴会場が登場! 無料休憩所を兼ねたこの大宴会場では、カラオケ(1曲100円)もできる。
飲食メニューもおつまみだけでなく、ご飯ものや麺類まで用意されている。ドリンクもビール、日本酒、ウイスキーを取り揃え、ボトルキープ専用の棚まである! さらにはソフトドリンクやデザートも用意されており、カキ氷は一年中食べられる。まるで居酒屋とファミレスが同居したようで、子どもからお年寄りまで、幅広い年齢層が湯上がりのひとときを楽しめるようになっているのだ。
さて、食事の人気メニューといえば、長らく新潟産の米にこだわった温泉釜飯だったのだが、4月末にドラマ「昼のセント酒」で蒲田温泉が登場した際、主人公が汐焼きそばとビールを注文したことから、放映後はそのセットを頼むお客さんが激増。ゴールデンウィーク中はドラマを見たというお客さんが北海道や九州からも訪れ、「昼のセント酒」の追体験をしていったとか。
筆者は最初、温泉釜飯にひかれていたのだが、せっかくなのでドラマと同じく汐焼きそばをビールとともに注文。熱い湯(45℃超)につかった後のビールは最高! 汐焼きそばのほうは、ビールのつまみに合わないのでは……という先入感があったのだが、梅、桜海老、貝、もやし、ニラと具が多く、酒のつまみにもバッチリ!
蒲田温泉に来たら、風呂上がりに2階へ寄らずに帰る手はない。「温泉釜飯」と「汐焼そば」、新旧どちらの人気メニューを注文するか悩ましいところだ。
(写真・文:編集部)
【DATA】
蒲田温泉(大田区|蒲田駅)
●銭湯お遍路番号:大田区 5番
●住所:大田区蒲田本町2-23-2
●TEL:03-3732-1126
●営業時間:10〜25時
●定休日:無休
●交通:JR蒲田駅から徒歩13分。もしくは、京浜東北線「蒲田」駅よりバス。「蒲田本町」下車、徒歩1分
●ホームページ:http://kamataonsen.on.coocan.jp/
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