都営大江戸線新江古田駅と西武新宿線沼袋駅のほぼ中間、静かな住宅地の一角に溶け込むようにして、1983年の開業から約40年の歴史を積み重ねてきた「えごた湯」は、昨年(2021年)9月5日にリニューアルオープンを迎えた。

もともと立地が半地下であることが特徴だったが、リニューアルに伴い、銭湯の趣やコンセプトを一新、男女両浴室にサウナと水風呂が設けられた。銭湯自体のデザインもスタイリッシュでアーバンなものへと変貌を遂げたことで、地元の常連層はもとより、エリア外からの多様な客層の話題にも上っているという。

今回、えごた湯 店主・小池憲市氏に、リニューアルオープンの経緯とその反響を聞く機会をいただいた。

浴室は間接照明により、全体的に落ち着いた雰囲気

雰囲気を損なわないよう、湯船もスポット照明で
適度な明るさが保たれている

最奥にはバイブラバス。適度な深さがあり、
じっくりとお湯を楽しむことができる

―― 本日はお時間をいただきありがとうございます! 最初に昨年のリニューアルオープンについての経緯をお聞かせいただけますか。

小池憲市氏(以下、小池):前回のリニューアル工事からだいぶ時間が経っており、配管の取り替え時期が来ていたこと、および施設としての老朽化が至るところに見られたため、リニューアルに踏み切りました。

 

―― 今回のリニューアルでは、リニューアル前と比べてかなり大きくイメージを変えられたようですね。デザインやコンセプト、新規で追加されたサウナなどはどのような流れで決まったのでしょうか。

小池:もともとリニューアル自体は5〜6年前から意識しており、その際にはデザインを建築家の今井健太郎さんにお願いしたいという思いが私の中で固まっていました。今井さんが手掛けられたほかの銭湯の評判も当然耳にしておりましたし、実際に足も運ばせていただきました。そうしていく中で、えごた湯のリニューアルも今井さんにお願いしたいなと思っていたんです。

そこで実際にえごた湯のリニューアルを決めた2020年の秋に、今井さんにコンタクトさせていただいたところ、ご快諾をいただきました。その後、実際の改装工事が始まる半年前まで、何回も打ち合わせを行いました。

 

―― 今回「ジオ銭湯」というコンセプトでリニューアルをされていらっしゃいますね。

小池:はい。もともと建物が半地下にあったため、その特徴をいかに生かした銭湯に変えられるかが、最も今井さんに期待したポイントでした。リニューアル前は、半地下からくる薄暗さを補うため、蛍光灯で隅から隅まで明るく照らししていたのですが、今回は今井さんがデザインされたほかの銭湯同様、ほの暗さを生かしたデザインにしてほしいと思ったんです。

今井さんにえごた湯へ実際に足を運んでいただいたところ、”地球を感じる地下のオアシス”をイメージして「ジオ銭湯」というコンセプトを提案いただきました。そのコンセプトを元に、実際のデザインについて協議し、今のえごた湯が完成したんです。

店主のこだわりでサウナ室は100℃しっかり温まれる熱さ。
5〜8名程度は余裕で入れる広さなのもうれしい

地球をイメージをし、青いライトアップが映える水風呂。
水温は16度前後に保たれており、
サウナ好きには最高のセッティング!

―― 今回、新規でサウナと水風呂を作られたことが、サウナ好きの方たちの間でも話題になっていますね。

小池:反響があって、とてもうれしいです! もともとデザインの段階からサウナを盛り込んでほしいと、今井さんに相談していました。常連さんから「サウナがあったらもっといいんだけどね」とコメントをいただくことも結構あったんです。なので、このリニューアルのタイミングでサウナと水風呂をセットで付けることは最初から決めていました。そのタイミングがサウナブームと重なり、想定以上に大きな反響をいただいております。うれしい限りです。

サウナ好きの方たちは、SNSなどで情報拡散もしてくださるので、その情報を見てさらに新たなサウナ好きの方がえごた湯に来てくださる、というよいサイクルが起きていると思います。

 

―― リニューアルで客層は変わりましたか。

小池:そうですね。もともとは近隣に住む方々や近くの大学の学生さんたちがメインの客層でしたが、リニューアルによって完全に変わりましたね。サウナ好きの方は、わざわざこのエリア以外のところから足を運んでくださっているようですし、デザインや設備が新しくなり入りやすくなったのか、女性のお客さんも、とても増えました。

「サウナイキタイ」(※)にも、女性の方たちのえごた湯のレビューを数多く投稿いただいており、そういった点でもサウナの反響は大きかったと実感しています。中には、わざわざ他県からお越しになる方もいらっしゃり、今までではあり得なかった集客が実現できました。
(※)サウナイキタイ:全国のサウナ施設情報がまとまっているWEBサイト

 

―― それはうれしいですね!

小池:そうなんです! ささやかですが、車でいらっしゃったお客さんには、駐車券をフロントまでお持ちくだされば駐車料金の足しとして100円お渡しするサービスをさせていただいています。ほんの気持ちなんですが、それでも喜んでくださるお客さんとのコミュニケーションがとてもうれしいんです。ただ、もともとの常連の方々は、今回のリニューアルであまりにも多くのお客さんがいらっしゃるので、ちょっと敬遠をされるようになってしまい、そこは申し訳ないと思っています。

入り口には「SENTO」のスタイリッシュな文字が!

のれんは印象的な濃い青で統一されている

―― たしかに常連さんからすると、落ち着くまではちょっと様子見、ということにはなってしまうかもしれませんね。ただ全体を通してみれば、リニューアルは大成功、ではないでしょうか。

小池:はい! ただ、もちろん経済的に大きな負担があったのも事実です。そのため、一過性のにぎわいではなく、今後も客足の途絶えない銭湯にしていこうと思っています。そのために毎日の清掃には特に力を入れていきますので、引き続き、どの年代・性別の方がお越しいただいても、気持ちよく安心して使っていただける銭湯を目指していきます。

 

―― 今後も楽しみですね。

小池:そうですね。実はうちの家系はずっと銭湯一家なんです。新潟から先々代が東京に出てきてから、一族みんなで銭湯を経営していました。ですので、僕も小さいころから当たり前に銭湯がある環境で育ちました。でも時は流れ、いとこたちが銭湯経営をやめていく中、このまま銭湯を続けるかどうか、リニューアル前は悩んでいたんです。
ただ、やはり自分が先代から受け継いだバトンは、できればこの後もできるだけ長くつないでいきたいなと思い、リニューアルに踏み切りました。そういう点では店を継いでくれる息子に期待しています!

(写真・文:銭湯ライター:中山英樹


【DATA】
えごた湯(中野区|新江古田駅)
●銭湯お遍路番号:中野区 10番
●住所:中野区江古田3-5-12(銭湯マップはこちら
●TEL:03-3385-7800
●営業時間:15~24時
●定休日:月曜(祝日の場合は翌火曜休み)
●交通:大江戸線「新江古田」駅下車、徒歩10分
●ホームページ:https://egotayu.com
●Twitter:@nakanoegotayu

※記事の内容は掲載時の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

お風呂上がりのドリンクも種類が豊富。
特にビールは、生ビールやクラフトビールなど
銭湯とは思えないほど充実のラインナップ!

すでにたくさんのサウナ好きが訪れた形跡が、
店内に貼られたステッカーからも感じられる