今回は、台東区浅草5丁目の「アクアプレイス旭」さんにお邪魔してきました。
浅草寺から言問通りを渡った北側を、地元の方は「観音裏」と呼びならわしてきたのだとか。近年は「奥浅草」と呼ばれ、浅草のもうひとつの顔として再び注目を集め始めているこのエリア。少し足を延ばしてこの辺りまで来ると、観光都市TOKYOのアイコンとして賑わう浅草インバウンドの喧騒は少し薄れ、昔ながらの江戸の洒脱な趣きが蘇ります。
松濤周辺の奥渋谷・オクシブ、隠田(おんでん)周辺の裏原宿・ウラハラもそうですが、繁華街の真ん中から少し外れたあたりが「ちょうどいい」のが東京という都市の特徴かも知れませんね。そんな肩肘張らない奥浅草に、アクアプレイス旭さんはあります。
ご主人の田中祐二さんにお話を伺いました。
もともと「旭湯」という屋号だったこちらは、都内で複数の銭湯を経営されていた先代のご主人が、昭和27(1952)年頃に元のオーナーから譲り受けられたそうです。
3代目となる現在のご主人が平成13(2001)年に近代的なビル型銭湯にリノヴェイトされた際に、屋号も「アクアプレイス旭」と改められたとのことでした。
「譲り受けたものなので正確な開業年はわからないんだよ」と仰っていましたが、昭和16(1941)年の浴場業界の名簿にも浅草旭湯の名前が残っているのこと。少なくとも約80年もの歴史があるんです! 一般的な企業の寿命がだいたい30年ということを考えると、その重みと貴重さがわかろうというもの。現代的な内外装や屋号からは想像もつきませんでしたが、こちらは約80年間を浅草とともにした歴史的な銭湯なんですね。
入浴して最初に目を見張ったのは、隅々まで行きとどいた清潔さです。
「ウチには特別なウリはないよ、普通だよ」なんておっしゃっていましたが、ご主人、それは違います! 湯船、浴室、タイル、カラン、脱衣場と、各部のキレイさはこれまでにお邪魔した銭湯の中で最高レベルでした。本当にピカピカに磨き上げられています。これが80年続く銭湯の現在進行形かと思うと感慨もひとしおですね。
お話を伺っている最中も入浴中も、4代目の直樹さんが非常に丁寧に脱衣場や浴室を整えられている姿をお見かけしました。このキレイさはこうした細やかな心配りあってのものなんですね。
肝心のお湯は固すぎず柔らかすぎずの絶妙な感触。井戸からくみ上げた地下水を使っていらっしゃるとのことで、それも納得です。
そして、驚いたのが水風呂! なんと、かけ流しです!! 水風呂って、入る人の頻度や水の埋め具合で温くなったり冷たすぎたり、なかなか温度が一定しないもののような気がします。ところが、こちらはかけ流しのために、いつでも18度に保たれた新鮮な水に満たされているんです。これは気持ちよい! 掛け値なくオールタイムベストの水風呂でした。これは「普通」じゃないですよ!
江戸とTOKYOが交差する町の銭湯、奥浅草アクアプレイス旭。おススメです!
(写真・文:銭湯ライター 品川致審)
【DATA】
アクアプレイス旭(台東区|浅草駅)
●銭湯お遍路番号:台東区 23番
●住所:台東区浅草5-10-5
●TEL: 03-3872-3091
●営業時間:15~25時
●定休日:火曜
●交通:つくばエクスプレス「浅草」駅から徒歩7分
東京メトロ銀座線「田原町」駅よりバス。「浅草4丁目」下車、徒歩1分
●ホームページ:http://taito1010.com/component/mtree/sento-list/aquaplace-asahi.html?Itemid=112
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