昭和40年代をピークに減少の一途をたどっていた銭湯が、近年は映画、ドラマ、CM、コミックなど様々なメディアに登場するようになった。最近ではNHKの朝ドラ『おかえりモネ』に大田区の明神湯、『仮面ライダーリバイス』に足立区のタカラ湯が登場して話題を呼んだ。昭和レトロブームや若者のサウナブームなども追い風になり、単なる入浴施設にとどまらない銭湯の魅力が改めて見直されているようだ。
そんな中、このほど刊行された『町田忍の銭湯パラダイス』は、銭湯研究の第一人者として数々の銭湯本を出版している町田氏ならではの視点で、銭湯の歴史から最新の銭湯事情まで、あらゆる情報をわかりやすく紹介した銭湯ガイドブックの決定版だ。
「威風堂々たる“宮造り銭湯”」「今、訪れるべき 東京銭湯12」「今も現役! 江戸時代創業銭湯」「地方のゲキシブ銭湯」といったテーマごとに、各銭湯の歴史や建物・設備の特色や知られざる裏話を紹介したり、注目のリノベーション銭湯や、新たな営業形態で生まれ変わった元銭湯などを「銭湯の新しいカ・タ・チ」として取り上げているのも興味深い。
また、銭湯関連の貴重なコレクションをはじめ、長年撮りためた写真、自身が描いた銭湯絵、ジオラマ作家の山本高樹さんと共同で制作した緻密な銭湯ジオラマなど、銭湯を記録し、後世に残すための情熱と多才ぶりには驚くばかりだ。
これまで銭湯に縁がなかった人には銭湯の入門書として、銭湯好きな人にはその魅力をもっと知るために、ぜひ一読をおすすめしたい。
(文:編集部)
『町田忍の銭湯パラダイス』
著者:町田忍
発行:山と渓谷社
定価:1540円(税込)