■後世に残る、銭湯文化研究の集大成
海外からの旅行客に注目されるなど人気を集める温泉に比べ、最盛期の昭和40年代に全国で1万8000軒あまりあった銭湯は、2015年10月の時点で4000軒を切るなど厳しい状況が続いている。
日本銭湯文化協会理事の町田忍氏は、もはや絶滅危惧種となりつつある銭湯について、これまで『銭湯遺産』『銭湯の謎』『銭湯へ行こう』『最後の銭湯絵師』など数多くの銭湯関連書籍を世に送り出してきた。その町田氏自らが「銭湯に関する集大成」と語る一冊が、この『銭湯−「浮世の垢」も落とす庶民の社交場』だ。
古代から始まる入浴史、銭湯史の解説をはじめ、訪ね歩いた全国3000軒以上の銭湯の中から、選りすぐりの店はもちろん、廃業してしまった懐かしい銭湯も、町田氏自ら描いたイラストや写真、歴史的資料とともに紹介する。
また、銭湯といえば建築様式や入浴設備などがとかく注目されがちだが、町田氏の研究はそれらに留まらない。全国の銭湯経営者、宮造り建築を手がけた大工、日本初の背景画ペンキ絵師の家族など、膨大な数の関係者との交流を重ねた結果、町田氏の手元には多くの資料が蓄積されてきた。「銭湯専門の広告代理店の変遷図」といったマニアックすぎる資料や、今はもう存在しない背中を流す三助さんの記録が本書に掲載できたのも、長年研究を続けてきた町田氏だからこそ。
また、大正時代に撮影されたペンキ絵、建築中の宮造り銭湯、昭和30年代の銭湯の空撮など数々の貴重な写真が関係者から町田氏に提供されたのも、銭湯研究にかけた情熱の賜物だろう。なお、登場する人物の中には、多くの物故者が含まれており、その聞き取り証言はそのまま貴重な記録となっている。
単なる銭湯の紹介に留まらない、銭湯文化を通じて日本人の入浴観、宗教観、美意識にまで踏み込んだ、町田忍氏の35年にわたる研究成果が凝縮された一冊。
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申込締切:2016年7月5日(火)
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町田忍:1950年生まれ。警視庁巡査を経て、明治から戦後における庶民文化史を研究。現在、(社)日本銭湯文化協会理事、庶民文化研究所所長。
著者:町田忍
判型・ページ数:A5・208ページ
定価:本体1,800円+税
発行:ミネルヴァ書房