■しみじみと感じる「銭湯のある国に生まれた幸せ」
(有)福祉のひろばは、このほどイラストレーター・ラッキー植松氏によるイラストコラム集「読本・なにわ銭湯いろはカルタ」を発行した。冊子『福祉のひろば』誌上に発表された連載「なにわ銭湯見聞録」に、書下ろしや手直しを加えて一冊にまとめたものである。
著者のラッキー植松氏は大阪在住のイラストレーターで、年間300日以上銭湯に通う銭湯愛好家。銭湯文化の普及活動を行う「銭湯文化サポーター’s」の代表も務める。
かつて東京と並ぶ銭湯王国だった大阪。しかし、年々銭湯の数は減少し、昭和40年頃に2300軒以上営業していたのが、平成28年現在では約500軒に。毎月5軒ほど、年間では40〜50軒の銭湯が「着実に」廃業しており、このままいけば十数年で絶滅してしまうという状況だ。そんな中、植松氏は「ほとんどの家に風呂がある時代だが、銭湯には銭湯にしかない魅力がある」と語る。
意外なことに、かつて風呂嫌いだったというラッキー植松氏が綴った本書では、関東と関西の風呂文化の違い、銭湯の歴史、入浴マナー、銭湯に来る人間模様まで実に幅広いテーマを取り上げている。京都の「人間洗濯機」や大阪の「人間乾燥機」(そんなものがあるとは!)、はたまた前田藩の隠し財産と銭湯経営者にまつわる伝説など……思わず読み入ってしまう内容のオンパレード。文章に添えられたカルタのイラストと歌にも、思わず笑いがこみ上げる。
著者があとがきに記している「銭湯のある国に生まれた幸せ」を、本書で再確認。読んでいるうちに、ひとっ風呂浴びに行きたくなった。
著者 : ラッキー植松 発行・発売 : 福祉のひろば 定価 : 1010円+税
販売はオンラインのみ。「福祉のひろばオンライン」で販売中