今回撮影したのは、豊島区の巣鴨湯。2022年のリニューアルオープン以来、現在も開店前から行列ができる人気銭湯である。最寄り駅は都電荒川線「庚申塚」駅だが、巣鴨駅から旧中山道の巣鴨地蔵通り商店街を散策しながら歩いてみるのもおススメだ。

巣鴨といえば高齢者でにぎわう街、というイメージが定着しているが、商店街を歩けばそれぞれの店が工夫を凝らし、活気ある街の演出に一役買っていることがわかる。個性的な店が軒を連ねる様は、東京の街の奥深さを象徴しているようにも思われる。年齢を問わず、きっと街歩きが楽しめるはずだ。

さて、撮影は1月下旬の晴れた日だったが、開店時間の午後3時には既に陽は西に傾き、店前の通りにも建物の影が長く伸びて冷たい風が吹き抜けていた。

それでも開店10分ほど前から徐々に人が集まり始め、あっという間に行列ができる。その中には仲間同士やカップルが多いのが印象的だった。巣鴨湯にはサウナや外気浴スペース(女湯は内気浴)があり、風呂上がりにくつろげるフロント前のロビーも広い。それぞれが思い思いに過ごせる空間があるのが、カップルや仲間同士の利用者にとって大きな魅力だと思う。もちろん、自前の桶を持参する「THE常連」の皆さんも健在である。

店内に入ってまず目をひくのは、整然と物品が並ぶフロントである。あらゆるニーズに応えるべく整えられた空間は、まるで駅のホームのKioskのように、無駄がなく効率的な雰囲気を感じさせる。普段見かけない銭湯グッズも見受けられ、好奇心がそそられるが、フロント周りでうろうろするのも申し訳ないので、通うごとに品定めをしたいと思う。

さて、巣鴨湯で最も特徴的なところは、浴室が畳敷きであることだ。イグサを利用した畳は湿気に弱いため、耐水性に優れた樹脂製の畳を採用している。歩くと温かみと独特の弾力があり、転倒防止にもなるので高齢者も安心だろう。寝転がりたい気分になるが、人目もあるからと、ふと我に返る。

また、サウナを目当てに通う人も多い。金属製の桶を組み合わせた特製の「オケシャン」から水が滴る、オートロウリュにより湿度が保たれていて心地よい。落ち着いた雰囲気でゆったりとくつろげる外気浴や内気浴のスペースも大きな魅力である。

実際に入浴して感じたのは、お客さんへの心配りがいたるところで感じられることである。スタッフも楽しそうに働いていて、銭湯全体が心地よさにあふれている。そんな雰囲気こそ、多くの人を惹きつける理由なのかもしれない。
(写真家 今田耕太郎)


【DATA】
巣鴨湯(豊島区|庚申塚駅)
●銭湯お遍路番号:豊島区 31番
●住所:豊島区巣鴨4−13−9(銭湯マップはこちら
●TEL:03-6826-9126
●営業時間:15~24時、土日祝12~24時
●定休日:火曜
●交通:都電荒川線「庚申塚」駅下車、徒歩1分
●ホームページ:https://toshima-1010.com/public_bath/sugamoyu/
●X(旧Twitter):@Sugamoyu_1010

※記事の内容は掲載時の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。


今田耕太郎

1976年 北海道札幌市生まれ。建築写真カメラマン/写真家。
2014年4月よりフリーペーパー「1010」の表紙写真を担当。2015年4月からはHP「東京銭湯」のトップページ写真を手がける。
http://www.imadaphotoservice.com/

※今田耕太郎さんが15年にわたって撮り続けてきた銭湯の写真が1冊の写真集になりました。

写真集「東京銭湯 SENTO IN TOKYO」
発行:株式会社ネクト編集事務所 価格:6050円(税込)
販売公式サイト:https://shop.nect-tokyosento.site
Amazon販売ページはこちら

紹介記事はこちら


写真集『東京銭湯 SENTO IN TOKYO』

 

帝国湯(荒川区)

 

小平浴場(小平市)(※廃業)