「常に良くして行こうという精神が改良湯らしさ」と語る改良湯4代目・大和伸晃さん。前回のリニューアルから約3年、今年再び改装工事を行うことになった経緯をご紹介しよう。

創業1916(大正5)年の改良湯は、都内でも珍しい100年以上も続く銭湯だ。かつては同じ屋号の銭湯が都内にもたくさんあったが、今も残っているのはこの改良湯だけである。

渋谷駅と恵比寿駅とのちょうど中間に位置し、それぞれの駅前から徒歩10分ほどである。明治通りに沿って歩くのもよいが、モダンな建物と古びた建物が混在する裏路地を歩いて向かうのも楽しい。明治通りに面した側の店の壁はかつて玄関があった場所で、現在は恵比寿様の化身をイメージした巨大な鯨の絵が描かれている。幾重にも連なる電線が空に浮かぶ波間のようで、その狭間を鯨が優雅に泳ぐ姿が改良湯へ人々を引き寄せる。

さて、改良湯ではサウナが大人気である。新型コロナウイルスの感染が広がり始めた時期から、サウナの利用者が増え始めたとのこと。旅行がままならない中で「身近な場所でのリラックスを求める人が増えたのでは」とご主人は話す。

感染予防対策のために入場者制限を行っていたが、サウナブームを受けてお客さんは増える一方で、過密状態になりつつあった。このままではお客さんが安心してリラックスできる空間でなくなるという危機感から、水風呂とサウナ室を拡張し、倉庫だった場所を外気浴ができる空間へと改装する計画がスタートした。2022年1月から2月にかけて約一ヵ月の休業を余儀なくされたものの、工事は無事に終了した。その甲斐あって、再開後はますます人気の銭湯となっている。

周辺にはIT系の会社が多いため、若いお客さんが多い。仕事の休憩時間にデジタルデトックスを好むのだろう。ほの暗い浴室では黙々と瞑想するように自分と向き合う人が多く、会話を控える「黙浴」も定着しつつあるようだ。

大正から令和に至るまで、変わることを恐れずに改良を繰り返してきた精神は今も受け継がれている。「お客さんと従業員に支えられて今がある」と話すご主人の言葉には、改良湯が常に良くなる秘訣が凝縮されている気がする。
(写真家 今田耕太郎)


【DATA】
改良湯(渋谷区|渋谷駅・恵比寿駅)
●銭湯お遍路番号:渋谷区 14番
●住所:渋谷区東2-19-9(銭湯マップはこちら
●TEL:03-3400-5782
●営業時間:月~金曜13~24時、日曜・祝日12~23時(最終入場は閉店30分前まで)
●定休日:土曜
●交通:山手線「渋谷」駅下車、徒歩12分 / 山手線「恵比寿」駅下車、徒歩12分
●ホームページ:https://kairyou-yu.com
●Twitter:https://twitter.com/kairyouyu1916

※記事の内容は掲載時の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。


今田耕太郎

1976年 北海道札幌市生まれ。建築写真カメラマン/写真家。
2014年4月よりフリーペーパー「1010」の表紙写真を担当。2015年4月からはHP「東京銭湯」のトップページ写真を手がける。
http://www.imadaphotoservice.com/

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