JR常磐線と京成金町線が交わる金町駅から徒歩で約7分。人通りが絶えない商店街に面して建つ、堂々たる宮造り銭湯が金町湯である。創業は1943(昭和18)年だが、残念なことに1950年代後半に火事で焼失。その後に再建した建物に全面改装を施し、今年(2021年)9月にリニューアルオープンした。

「歴史を感じてもらえる雰囲気が一番の売りですね」と語るのは、金町湯4代目の山田新太郎さん。今年4月に本格的に家業を継ぎ、それに合わせてリニューアルに踏み切った。

木造建築、高い天井、ペンキ絵といった宮造り銭湯のよさはそのまま生かし、「ニューレトロ」をコンセプトに内装、外装ともに一新。リニューアル前は玄関で客を出迎えていた招き猫のタイルはフロントに移設し、使わなくなった番台はなんと正面玄関に移設するなど、これまでにない斬新な取り組みが随所に見られる。そこには代々受け継いできた建物への愛着と、ものを大切にし使えるものは再利用するという信念がうかがえる。また、湯上がりにくつろげるように、和の風情を楽しめる坪庭やウッドデッキのスペースが新たに設けられているのも目を引く点だ。

浴室に目を向ければ、正面の背景画は中島盛夫氏が描いたペンキ絵の富士山、そして浴室入り口の上の壁面にも中島氏の元で修行した田中みずきさんの富士山が描かれており、計4つも富士山の絵がある銭湯も珍しい。

リニューアル後は、従来より多かった高齢のお客さんに加え、若いお客さんや家族連れが増えた。ありがたいことだが、町中にある銭湯に慣れていないゆえにはしゃいでしまう若いお客さんもいるそうだ。コロナ禍が続く中「黙浴」を意識してほしいものだが……。「“同じ釜の飯を食った”ではないですけど、同じ釜で沸かした湯につかる者同士、思いやりを持ちマナーを守って楽しんでほしいですね」と新太郎さん。

銭湯に慣れていないお客さんに習慣やマナーを伝える4代目の気苦労は多いようだが、新たな金町湯の歴史を築いていくにあたっての“生みの苦しみ”のようにも思える。「気持ちがつながる空間であってほしい」と4代目が願う、新たな金町湯の歩みは始まったばかりである。
(写真家 今田耕太郎)


【DATA】
金町湯(葛飾区|金町駅)
●銭湯お遍路番号:葛飾区 32番
●住所:葛飾区金町5-14-9(銭湯マップはこちら
●TEL:03-6326-3805
●営業時間:15時半~22時半
●定休日:木曜、第4金曜
●交通:常磐線「金町」駅、もしくは京成金町線「京成金町」駅で下車、徒歩7分
●ホームページ:https://kanamatiyu1943.wixsite.com/kanamachiyu
Twitter:@kanamachiyu1943

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今田耕太郎

1976年 北海道札幌市生まれ。建築写真カメラマン/写真家。
2014年4月よりフリーペーパー「1010」の表紙写真を担当。2015年4月からはHP「東京銭湯」のトップページ写真を手がける。
http://www.imadaphotoservice.com/

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