今回撮影したのは、2018年4月18日にリニューアルオープンしたばかりの井草湯。
以前の井草湯も知っているのだが、建物自体が新しくなり、すっかり生まれ変わった。家族でゆっくり楽しめる空間になっているのが素晴らしい。
お話を聞かせてくれた3代目のご主人によると、現在の建物も3代目とのこと。昭和28(1953)年創業の井草湯は、現在の環状8号線上にあり、道路拡張に伴い2代目の井草湯が建てられた。今回の建て替えで3代目の井草湯の誕生となる。
銭湯で生まれ育ったご主人に銭湯での思い出は何かと聞いてみたところ、「子供の頃に友達と銭湯で遊び、たまにお客さんに叱られたことを今も覚えている。家族のように接してくれたお客さんに育てられた気がする」とのことだった。今銭湯を営んでいるのも、その恩返しの気持ちが大きいという。
そんなご主人の銭湯に対する想いは、子供用の小さな湯船に凝縮されている様な気がする。その小さな湯船には、よく日本庭園で見かける竹筒の「ししおどし」が壁面に細工されているほか、湯船自体が大人の目が届きやすい配置になっており、安心して親子で楽しめる工夫がされている。
また、2階にはキッズルームが隣接された休憩スペースがある。親はゆっくりビールを楽しむことができ、子供同士の交流も生まれることだろう。子供に飽きさせない「退屈児童ゼロ」の心遣いがとても嬉しい。
現在、銭湯を知らない子供が増えているのは、銭湯に行ったことがない親が多いのが理由の一つだと考えるご主人は、ここ井草湯で銭湯を知ってもらい、銭湯を好きになってくれたら嬉しいと言う。
子供たちには井草湯で思いっきりはしゃいで、たまに叱られて、銭湯での楽しい思い出を沢山作ってもらいたい。そして大人になった時は、銭湯ではしゃいでいる子供たちを見かけたら優しく叱ってあげて欲しい。
(写真家 今田耕太郎)
【DATA】
井草湯(杉並区|井荻駅)
●銭湯お遍路番号:杉並区 2番
●住所:杉並区下井草5-3-15
●TEL:03-6913-7226
●営業時間:14時半~22時半(最終入店22時)
●定休日:月曜
●交通:西武新宿線「井荻」駅下車、徒歩6分
●ホームページ:http://sentou.jp/map/2-14.html
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今田耕太郎
1976年 北海道札幌市生まれ。建築写真カメラマン/写真家。
2014年4月よりフリーペーパー「1010」の表紙写真を担当。2015年4月からはHP「東京銭湯」のトップページ写真を手がける。