銭湯巡りに出かけたり、湯上がりに少し歩いてみようかなと思える季節になった。私の健康維持は銭湯に依るところが大きい。

今回の銭湯は、中目黒駅から散歩にほどよい距離にある創業昭和28年の大黒湯。桜の季節には、蛇崩川(じゃくずれがわ)緑道の桜を楽しみながら歩いて向かうのもいい。

大黒湯の目印は、創業の時からある松の木。看板娘ならぬ「看板松の木」で、綺麗に剪定された姿がなんとも愛らしい。どこか昭和の雰囲気が漂う大黒湯には毎年新調する木桶があり、私が撮影した時にはまだほのかに檜の香りがしていた。浴室の高い天井と木桶で奏でる音がなんとも心地よく、ご主人曰く「今がちょうど良い頃合いの音」とのこと。

そして驚くのは、タイルやガラスに背景が写り込むほど浴室内が綺麗だということ。長い間ここまで綺麗に保つことは並大抵の事ではない。ご主人と女将さんがこの銭湯を大切にしている事が伝わってくる。閉店後に息子さんが清掃を手伝ってくれると嬉しそうに話すご主人の顔を見ていると、こちらも嬉しくなる。

ご主人や女将さんの話を聞いていると、銭湯一軒一軒に歴史があり、それぞれがドラマチックであると、つくづく思う。銭湯をテーマに撮影を始めて10年以上経つが、未だに気づかされることが多々ある。決して暗い話ばかりではなく、人としての素晴らしい考え方など、写真には写しきれないストーリーを聞けるのも、銭湯を撮影する楽しみの一つだ。

(写真家 今田耕太郎)

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【DATA】
大黒湯(目黒区|中目黒駅)
●銭湯お遍路番号:目黒区 3番
●住所:目黒区上目黒4-25-10
●TEL:03-3712-2641
●営業時間:15~24時
●定休日:月曜
●交通:東急東横線「祐天寺」駅下車、徒歩7分/東急東横線・東京メトロ日比谷線「中目黒」駅下車、徒歩13分
●ホームページ:–
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今田耕太郎

1976年 北海道札幌市生まれ。建築写真カメラマン/写真家。

2014年4月よりフリーペーパー「1010」の表紙写真を担当。2015年4月からはHP「東京銭湯」のトップページ写真を手がける。

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