大蔵湯初代ご主人の太三郎さんは17歳で銭湯の世界に入り、この地で大蔵湯を始めたのが34歳の時。最初は周りが桑畑と麦畑ばかりで苦労をされたそうだが、オート三輪で薪集めをしていた頃を懐かしそうに話してくれる太三郎さんは、創業から50年経った今も元気に働いている。
2016年12月にリニューアルしたばかりの内装は、二代目ご主人・太一さんの思いが反映されていて、音と光と風を感じながらお風呂を楽しめる造りになっている。水の流れる音、連子格子(れんじこうし)から差し込む光、高い天井からそよぐ風、木を多く用いた空間。そんな浴室に据えられた大きな湯船につかれば、時間がゆっくり進むように感じる。
その素晴らしいお風呂に加えて、大蔵湯のもう一つの大きな魅力として、「お客さんに喜んでもらうために銭湯を営んでいる」という気持ちが挙げられると思う。経営者のお二人の話を聞いていると、それぞれの言葉がお客さんの笑顔に繋がっていると感じる。銭湯がより良いサービスをどのようにするべきかが常に考えられていて、こんな銭湯がもっと増えればいいなと思えるのである。
古き良きものを大切にすることの重要性は変わらないと思う。その反面、新しいことも取り入れていかないと、より良いものを作れないということを大蔵湯に教えられた気がする。
取材の最後、太三郎さんに84歳の今でも元気に働いている秘訣を聞いてみた。すると「家族とお客さんへの愛情が元気の原動力」と答えてくれた。そんな銭湯の親父ならではの言葉に、思わず目頭が熱くなったことを覚えている。私もいつかそんな言葉が似合うようになりたいと思う。
(写真家 今田耕太郎)
【DATA】
大蔵湯(町田市|町田駅)
●銭湯お遍路番号:町田市 1番
●住所:町田市木曽町522
●TEL:042-723-5664
●営業時間:14~23時
●定休日:金曜
●交通:小田急線「町田」駅よりバス。「滝の沢」下車、徒歩3分
●ホームページ:–
●Twitter:https://twitter.com/OokurayuTaichi
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今田耕太郎
1976年 北海道札幌市生まれ。建築写真カメラマン/写真家。
2014年4月よりフリーペーパー「1010」の表紙写真を担当。2015年4月からはHP「東京銭湯」のトップページ写真を手がける。