銭湯の撮影をしていると、必ずといっていいほど『何の写真』と通りがかりの人に声をかけられる。そのほとんどが常連さんで、私は必ず「よく来るんですか?」と尋ねる。このちょっとした会話が、楽しくてたまらない。
今回撮影した一の湯では「毎日、何十年も来てるわよ」と、答えてくれたご婦人に出会った。私は銭湯マニアではないことを自覚している。それほど銭湯のことも詳しくない。でも、このご婦人のような常連さんに出会えると、無性に嬉しくなる。このような出会いは、銭湯の写真を撮っていて本当に良かったと思わせてくれる。
常連さんが多い銭湯は必ずといっていいほど、店内が清潔で、女将さんの笑顔が素敵である。一の湯の常連さんの中には、女将さんの笑顔を楽しみにしている人もいるはず。
開店から閉店まで番台に座る、という大変な仕事をこなしつつ見せる笑顔は、一の湯の大きな魅力の一つなので、ぜひ足を運んでほしい。
一の湯は西武新宿線の沼袋駅から迷わず行けば、徒歩1分。駅前商店街の一角にあるため、周りは賑やかで湯上がりに一杯やるにも困らない。これからの季節、銭湯デートをするにも最適な環境なので、きっと素敵な時間を過ごせるだろう。
物事が早く動く、便利な時代になったのはいいけれど、老若男女、分け隔てなく安心して楽しめる場所は確実に減っている。こんな時代だからこそ、銭湯がある私たちはとても幸せ者だと思う。
(写真家 今田耕太郎)
【DATA】
一の湯(中野区|沼袋駅)
●銭湯お遍路番号:中野区8番
●住所:中野区沼袋1-39-10
●TEL:03-3386-2836
●営業時間:16:00〜25:30(日祝は15:00〜25:30)
●定休日:第1、3、5水曜
●交通:西武新宿線「沼袋」駅下車、徒歩1分
●ホームページ:http://ichino-yu.jp/
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今田耕太郎
1976年 北海道札幌市生まれ。建築写真カメラマン/写真家。
2014年4月よりフリーペーパー「1010」の表紙写真を担当。2015年4月からはHP「東京銭湯」のトップページ写真を手がける。