今回撮影をしたのは、東急田園都市線用賀駅から徒歩8分ほどのところにある藤の湯。

その堂々たる佇まいは動物に例えると象のようであり、こちらのご主人が考案したという世田谷区浴場組合のロゴマークが象をモチーフにしているのも、全くの無関係ではないような気がします。

 藤の湯に行くには、ちょっとした路地を通り抜けます。初めての人は路地の入り口がどこか迷うかもしれません。でも私は銭湯に向かうとき、迷うことが楽しみの一つでもあり、銭湯を見つけたときの驚きを大切にしています。このときの印象が撮影に影響するので、銭湯を探している時の気分はハンターに近いかもしれません。

 今回の撮影のポイントは、都内では珍しい浴室に設置された東屋(あずまや)を撮影すること。東屋とは屋根と四方の柱だけで組まれた小さな建物のことで、室内に建てるには空間そのものの高さが必要になりますが、藤の湯の天井はそれを可能にする高さがあります。

 鬼瓦まで載っている立派な東屋の下には、ヒノキの香りが漂う木の浴槽。その水面には東屋の影がゆらめき、他の銭湯とはひと味違う落ち着いた空間を作り出しています。

 また、店内の随所にご主人の版画作品や木彫りのフクロウなどが展示されています。写真には写しきれない魅力が沢山あるので、あとは実際に行っていただき、その魅力を肌で感じていただくことをお勧めします。運が良ければ、お肌がツルツルの湯あがり美人に出会えるかもしれません。(写真家 今田耕太郎)


【DATA】
藤の湯(世田谷区|用賀駅)
●銭湯お遍路番号:世田谷区 37番
●住所:世田谷区玉川台2-1-16
●TEL:03-3700-3920
●営業時間:15時半~23時
●定休日:金曜
●交通:東急田園都市線「用賀」駅下車、徒歩8分
●ホームページ:https://www.setagaya1010.tokyo/guide/fuji-no-yu/
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今田耕太郎

1976年 北海道札幌市生まれ。建築写真カメラマン/写真家。

2014年4月よりフリーペーパー「1010」の表紙写真を担当。2015年4月からはHP「東京銭湯」のトップページ写真を手がける。

http://www.imadaphotoservice.com/