【最終更新】2023年1月31日、原稿の一部を修正しました。
サウナには湿式と乾式がありますが、通常は温度が100℃近い乾式のものだけがサウナだと思っている人が多いのではないでしょうか。熱源が何かに関わらず、湿度が低く温度が高いサウナを乾式と呼んでいます。乾式サウナの湿度は20%以下が多いようです。
一方、湿式サウナは低い温度で、水蒸気や霧を部屋に充満させるもの。湿式は主にスチームサウナとミストサウナがあります。「東京銭湯」の銭湯マップで検索すると、スチームは10軒、ミストは12軒がヒットします。合計しても湿式サウナ施設は浴場全体の約5%に過ぎません(サウナ設備を持つ銭湯の8%)。
湿式サウナは当然湿度が高い反面、60℃くらいで乾式サウナほど熱くはありません。湿式サウナは乾式サウナほど高温ではないのに、乾式サウナより熱く感じるという人もいます。現に乾式サウナが、湿式サウナと同じくらい深部体温が上昇するという研究データがあります。これは肌への熱伝導率が関係しているからです。つまり肌の表面が乾いているときよりも、濡れているときのほうが熱を感じやすくなるのです。100℃のお湯につかれなくても、100℃の乾式サウナに入れるのはそのせいです。
ところで湿式サウナのスチームとミストの違い、ご存知ですか? 当たり前ですがスチームは水蒸気、つまり水が気化した湿度の高い気体です。一方ミストは霧。霧は湯気と同じく水滴が細かくなったものなので液体です(霧は液体と気体の中間という不明瞭な説明も一部にありますが、本質的な問題ではないのでそれは措きます)。つまり、スチームサウナもミストサウナも低温高湿の湿式サウナで、気体で温めるのか、液体で温めるのかが違うだけ。具体的には気体は下から上に向かい、液体は上から下に降ってくるわけです。
今回は、大阪ガス株式会社が2009年10月に発表した「ミストサウナ入浴の7つの効用」という論文に沿って、湿式サウナの一つであるミストサウナについて考えてみましょう。この論文では、①体が温まり発汗する効果、②肌水分の増加効果、③手足の冷えの緩和効果、④鼻詰まりが楽になる効果、⑤しわや毛穴の減少、⑥メタボ予防効果、⑦熱中症予防効果の7項目を取り上げ、通常の入浴とミストサウナ入浴を比較しています。そしていずれもミストサウナに軍配が上がったという興味深い実験の論文です。今回は①②⑤の結果について見てみます。
この論文によれば、ミストサウナにはノズル噴霧式、気化式、水破砕式の3つの種類があります。違いはミストの粒径のみで、どの方式でも室温を40℃にするための暖房機能が必要で、湿度は80~100%にコントロールされています(図参照)。
ミストサウナ入浴の7つの効用(大阪ガス・竹森利和)より
ミストサウナの実験は「通常入浴群」(8~10名)と「ミストサウナ群」(8~10名)で行われ、通常入浴群は40℃の湯に10分入浴、ミストサウナ群は室温40℃、湿度80~100%で10分間ミスト浴を行いました。実験内容の詳細は省略しますが、結果は以下の通りでした。
①体が温まり発汗する効果:ミストサウナ入浴時の体温上昇は通常入浴時の2倍以上(10分後にミストサウナでは体温が0.9℃上昇したのに対し、通常入浴では0.4℃の上昇)で、発汗量もほぼ同様の傾向(10分後にミストサウナでは発汗量が約200gだったのに対し、通常入浴では約100g)を示しました。この結果から、ミストサウナは通常入浴の2倍温まり、汗をかくことが分かりました。また入浴後20分経過後も、サーモグラムからミストサウナのほうが手足の皮膚温が高くなっていることが分かりました。
②肌水分量の増加効果:肌の水分量が多ければ、カサカサした肌感覚が改善され、女性にとっては美肌効果が期待されます。通常入浴群とミストサウナ入浴群で肌水分量の増加率を調べたところ、1回入浴時ではミストサウナ群が40%の増加率だったのに対して、通常入浴群は10%でした。しかし入浴後の一時的な肌水分の増加が美肌効果を生み出すかどうか分からなかったので、1カ月連浴した前後で再び調べたところ、ミストサウナ群が約20%の増加率だったのに対して、通常入浴群は6~8%でした。論文では、「角質層の剝がれが減少し、肌からの水分蒸散量が減少することが確認されており、このことが平常時の肌水分が増加した要因と考えられる」としています。つまり普通の入浴をするよりも、ミストサウナを利用するほうが美肌効果の高まることが期待できるということです。
実はこの実験、①も②もサウナ嫌いの女性をターゲットにして行われました。サウナファンが急増している陰でサウナが嫌いな人も存在していることは事実。サウナ嫌いの理由を調べてみると、いくつかある中で「サウナ室が熱くて息が詰まりそうだから」というのが多いそうです。また、サウナ好きを性別で見ると、男性のほうが多いという調査結果が見受けられます。このような背景があるならば、サウナ嫌いの女性をターゲットにして実証された、ミストサウナの効果については大変信頼がおけるといえるでしょう。
ところで、②の肌水分量の増加効果は、⑤の「しわや毛穴の減少」と深く関連しているようです。ちなみに女性の9割がお肌の悩みを持ち、50代女性の7割がしわに悩み、20代女性の6割が目立つ毛穴に悩んでいるといわれています。「⑤しわや毛穴の減少」の実験は、しわについては中高年の女性を、毛穴については若年の女性を対象に行われました。その結果、1カ月のミストサウナ連浴によって、目じりの小じわの総面積が30パーセント減少、ミストサウナ浴中にフェースエクササイズを行うと目立つ毛穴が7%減少するという結果が得られたのです(通常入浴群では目じりの小じわの総面積が増大、目立つ毛穴は2%程度減少)。
「しわ」や「目立つ毛穴」の原因は乾燥や紫外線による角質層の剥がれといわれますが、ミストサウナの連浴により、②で証明されたように肌水分が増加して、角質層が整えられたことがこの結果につながったのではないか、と考えられています。こういう実験結果を知ると、普段何気なく使っているミストサウナも魅力を感じてきますね。さらに乾式サウナと湿式サウナの比較研究に興味がわきますが、この続きは次回にします。(以下、次号)
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