今年も肌が乾燥する季節になりました。肌が乾燥すると現れる症状がかゆみ。そして乾燥肌と密接な関係にあるのがお風呂の入り方。「銭湯で元気!」では過去、2回にわたって乾燥肌対策の入浴法について解説しました(3467)。おさらいすると、そのポイントは次の通り。
① 浴槽のお湯は38~40℃
② 15分以上の長風呂は避ける
③ 体をゴシゴシ洗わない
④ 湯上がり後10分が保湿ケアのリミット

ところで、体のかゆみというのは乾燥だけが原因ではありません。アトピー性皮膚炎やじんましんなどの皮膚疾患も、人によっては激しいかゆみを引き起こします。今回はじんましんと入浴の関係について調べてみました。

実は「じんましん」と一口にいっても種類はさまざま、原因も複雑で、どのように発生するのかさえ十分に突き止められてはいないようです。死に至らない難病、とでもいえばいいでしょうか。種類についても、急性と慢性に分けたり、アレルギー性のものと非アレルギー性のものに分けたり、突発性と原因が特定できるものに分けたりなどさまざま。治療法の決定打がないことだけが共通している、厄介な病気なのです(7割は原因不明という説もあります)。

花粉症やアトピー性皮膚炎になる人はアレルギー体質といわれますが、この体質の人はじんましんにもなりやすく、非アレルギー性のじんましんよりはるかに数が多いと考えられています。アレルギー性のじんましんは、外部から侵入してきた異物(抗原)を体が有害なものとみなし、免疫細胞がそれをやっつけるために抗体を作るところからスタートします。その抗体に抗原が結合すると、細胞からヒスタミンというかゆみ物質が放出され、血管を拡張させます。その作用が皮膚の表面で起こると、発赤してじんましんの症状が現れ、かゆくなるのです。

こうならないようにするにはどうすればいいか、一口でいうと「免疫バランスを整える」ということになるのですが、簡単にいくわけではありません。そもそも、アレルギー体質とは免疫機能のバランスが乱れている体質ですから、いいかえれば自律神経の乱れやすい体質、ということにもなります。ならばお勧めなのは「温冷交代浴」。あるいは「サウナ→水風呂→外気浴」のセット。

銭湯での温冷交代浴についても、このコラム(4950)で詳しく説明しましたが、もう一度ポイントを整理しましょう。
① 40℃のお湯に3分肩までつかり、その後湯船から出て30℃くらいのぬるま湯をシャワーで手先、足先に30秒ほどかける
② これを3回繰り返す
③ 最後はお湯につかってから上がる

③については「冷浴で上がる」が都市伝説化していますが、「銭湯で元気!(50)」では、なぜ温浴で終えなければならないかを次のように説明しています。

「冷水浴をしますと、当たり前のことですが体温(特に皮膚温)が急激に下がります。体温が下がりますと回復までに約1時間以上時間がかかります。体温が低下すれば血管は収縮し、血流の改善効果は低下してしまいます。お風呂の最大のメリットは、温熱効果によって血管を拡張させ血流を改善させることです。そのため、場合によって入浴後は毛布などで包み、保温を進める場合もあるくらいです」(東京都市大学・早坂信哉教授)

温冷交代浴はいいかえれば自律神経のトレーニング。自律神経の乱れが原因のアレルギー疾患全般に効果が期待できる入浴法といわれています。ただ、アレルギー体質の人の中には、プールに入るとじんましんになる、あるいはプールサイドにいるだけでもなる、という方もいます。これは塩素に過敏に反応することが原因と考えられています。

余談ですが、じんましんやアトピー性皮膚炎で、かゆくなっている部位に熱いシャワーをかけるとかゆみが治まる、という人がいます。これは有効な対処法なのでしょうか。例えば痛いところを擦ると和らぐような気がすることがありますから、かゆみ止めにも何らかの刺激で効果はありそうです。

その効果の有無について調べていると、25年前(1997年)に福井安彦さんというアトピーに関する著作の多い医師が書いた『アトピーのホット・シャワー療法―熱いお湯を当てるだけで、しつこいかゆみがピタッと止まった! 』という本が出版されていることが分かりました。ただその後、これに関する研究発表は見当たりません。

どうやらそのヒントは脳にありそうです。脳は、欲求が満たされたときや満たされるとわかった時に活性化し、気持ちよさや幸福感を引き起こすシステムがあるといわれています。これは「報酬系」と呼ばれており、熱いお湯をかゆいところに掛けるとその回路が働いて「気持ちいい!」となるようです。しょせん一時的な対策に過ぎませんが、結果的にその行為は肌へのダメージが大きくなる可能性があり、保湿成分が流れ出て乾燥肌になりやすくなったり、症状が治りにくくなったり、場合によってはやけどするリスクさえ考えられます。

じんましんに話を戻します。今回お話ししたアレルギー性のほかに、じんましんには「寒冷じんましん」「温熱じんましん」「コリン性」じんましんなど発症の仕方が異なる種類があり、それぞれ異なる入浴法が適している可能性が分かってきました。ただ、「じんましんかも」と思っていても、その種類まで特定できる人はいないでしょう。突発的にかゆみが発症しやすい人は専門医で受診して確かめることが必要で、そのうえでお風呂の入り方を選んでください。アレルギー性以外のじんましんの入浴法については次号で説明します。(以下、次号


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