夏は家でも職場でもずっと冷房にあたっていることが多いですね。また、暑さのあまりかき氷やアイスクリーム、それに冷たい飲み物を多くとりすぎてしまうこともあります。その結果、体は冬以上に冷えてしまうことにもなりかねません。特に冷え性タイプの人は、血のめぐりやリンパの流れが悪くなります。すると体の凝りを感じたり、不快な症状に見舞われたりしがちです。
夏は冷たい飲み物のとりすぎに注意
このように、知らず知らずのうちに体を冷やしてしまう夏だからこそ、生活の中で実践すべき大切なことがあります。それは湯船につかって体を温めること。昼間冷えた体を温めるために、夜の7時か8時に湯船につかれば滞っていた血流やリンパの流れが改善し、凝りなどの症状は解消するはず。また、以前このコーナーで入浴と睡眠について書きましたが、その時間帯に入浴すれば10時か11時ころには体温が下がり、スムーズな眠りへと導かれるはず。つまり熱帯夜の寝苦しさから逃れ、いい睡眠につながるというわけです。
その入浴の場を銭湯にすれば、夜風にあたりながら帰宅することがいいクールダウンになり、より良い効果が期待できるのです。このルーティンが、ひいては夏バテの予防にもなるというわけです。
ただし夏は、熱い湯船は避けたほうがいいでしょう。40度以下、できれば低温の炭酸泉がある銭湯ならうってつけです。温度が低いほど浸かる時間を長くすることができますが、15分から20分くらい浸かるのが理想的です。夏場、熱いお湯は5分入っているのも辛いものですが、カラスの行水では体の芯まで温まらないのです。しかし38~40度の温度なら、長湯が苦手という人でも15分近くはいけるはず。2、3回に分けて入る「分割浴」でも構いません。トータルで20分の入浴を目指しましょう。
湯船に浸かることの効果は「温まる」だけではありません。浮力によって湯に浸かっているときは体重が10分の1以下になりますから、筋肉や関節への負担が軽減して心身ともに緊張から解放されます。また温まれば皮膚の毛穴が開きますから、その後で体を洗うと汚れが落ちやすくなります。ついついシャワーで過ごしたくなる夏ですが、湯船に浸かれば多くのメリットがあるのです。
夏場の入浴は、ぬるめの炭酸泉がうってつけ(写真は台東区のひだまりの泉 萩の湯)
ただし、夏の銭湯入浴は前後に水分補給も忘れないことが大切です。油断をすると脱水症状を起こし、熱中症と同じことが起きる可能性があるからです。水の補給でもかまいませんが、ポカリスエットなどのイオン飲料のほうが、素早く水分を体に吸収させる効果があるのでお勧めです。
ポカリスエットのほかに、入浴時に適した飲み物として東京都市大学の早坂信哉教授が勧めるのは緑茶です。
「夏の銭湯入浴の留意点は水分補給。41℃、15分間の入浴で800mlもの水が体から抜けていく、という研究報告があるように、お風呂では思った以上に脱水状態になります。水が体から抜けていった結果、当然血液は粘り気が強くなり、血栓ができやすくなります。このような脱水を防ぐためにも、お風呂の前後には意識して十分な水分を摂る必要があります。
お風呂のときに飲むべき飲み物として、私は『緑茶』をお勧めしています。よく知られているように緑茶はカロリーゼロで、成分として健康や美容に役立つカテキンを豊富に含んでいます。茶カテキンはお茶に独特の苦味や渋味を与えているポリフェノールの一種で、脂肪消費作用や抗老化作用(抗酸化作用)など、美容が気になる人にとっては嬉しい作用があるのです。カテキンは通常では体内に吸収されにくいのですが、お風呂の前に緑茶を飲むとカテキンの吸収がよくなる可能性があります。
このことは私たちの研究グループが、静岡の温泉で静岡産の「やぶきた茶」を使い研究して分かりました。緑茶を飲んだ後に温泉に入る場合と、緑茶を飲んでそのまま室内で過ごす場合を比較した結果、緑茶を飲んで温泉に入った場合のほうが血液中のカテキンの濃度が濃くなっていたのです」
銭湯での入浴前に、ぜひ緑茶飲料をどうぞ。
(「銭湯で元気!」は毎月第2金曜日に更新します)
WEB版「東京銭湯マップ」では、炭酸泉やぬる湯の湯船がある銭湯の検索ができる