銭湯で皆さんはどのくらいの時間、湯船につかっていますか? 最近、銭湯のお湯の低温化を試みている店が増えているようですが、東京ではまだまだ「銭湯のお湯は熱い」が一般的です。なので、人によっては熱い風呂にさっと入り、すぐに出てしまう方もよく見かけます。それが「江戸っ子の粋」、という考えもありますが。

昨今、全国の公衆浴場ではヒートショックプロテインを体内に増やす健康入浴のキャンペーンを展開しており、銭湯の平均的な湯温である42度の湯船で10分間の入浴を週2回習慣化することによって、老化を防ぎ美容効果も高くなるなど、様々な効果を生みだすとアピールしています。ただ、ヒートショックプロテイン入浴を行わない日の入浴法(お湯の温度と入浴時間)はどれくらいが適切なのでしょうか? 実はこれ、体調や気分、入浴目的によっていくつかの正解があるのです。今回はこれについてお話しましょう。

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まず、体を清潔にするということを除くと、お風呂に入る目的の一つは疲労回復とリラックスです。リラックスの基本は副交感神経を優位にすること。その結果、疲労も取り除くことができます。この目的で入浴するなら、38~40度のお湯に15分程度入ることをお勧めします。疲れて帰ってきた夜、精神的なストレスや足の疲れには、この入浴法がベストです。

疲れにくい体を作るなら40度のお風呂に20分、または42度のお風呂に10分。これはヒートショックプロテイン入浴で説明したとおり、週に2回程度、3日間置きくらいに実行するのが得策です。

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疲れているけど、もうひと頑張りしよう、という場合は、42度の湯船に5分くらい入って交感神経を優位にしましょう。改めて気合が入る入浴法ですが、くれぐれも寝る前は避けてください。一般に、お湯の温度が41度を超えると交感神経が優位になり、40度以下だと副交感神経が優位になります。入浴時間は長いほうが血のめぐりはよくなります。温められた血液が全身をめぐる回数が増えるほど、体はじっくりと温まっていくのです。

しかし、入浴時間をただ長くすればよいというわけではありません。長風呂はよくないこともあるのです。それは特に冬のこの時期、乾燥肌になりやすくなるということ。長時間お湯につかっていると、皮膚表面の毛穴が開くことによって水分が蒸発しやすくなり、その結果肌は乾きやすくなります。高齢になるほどこの傾向が強くなり、入浴後にかゆみを感じるようになります。ですから、長くお風呂につかったときは、上がってから全身に保湿クリームを塗るようにしましょう。

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お湯の温度が複数用意されている銭湯も増えてきた(写真は荒川区の日暮里 斉藤湯

 

長風呂は乾燥肌以外にも注意すべきことがあります。熱いお湯に長時間つかっていると脱水症状を起こすことがあるからです。入浴中の事故の大半は、この脱水症状だといわれています。ですから、長風呂が好きな方はできるだけ体に負担をかけないように、少しぬるめの38~40度の湯船を選びましょう。このくらいの温度なら、血圧の上昇を抑えることもできます。もうひとつ、飲酒後の長風呂は大変危険なため、絶対に避けるようにしましょう。なぜなら、入浴で体が温まると血液循環が良くなることによって、アルコールが勢いよく全身に回るからです。その結果、脳や心臓の血流が減り、脳貧血や心臓発作の引き金になる危険がとても大きいのです。

飲酒後の入浴はタブーとして、長風呂好きな方は休憩をはさみながらが安全です。3分ほど湯船につかったら一度出て体を洗い、また湯船につかるというような具合に。この方法なら体への負担が少なくなるため、長風呂をしても問題ないでしょう。また、長風呂の前には、必ず十分に水分補給をしておくようにしてください。必要に応じて、入浴中も水分を取るように心がけましょう。

湯船につかる時間の長さも大事ですが、入浴するタイミングも重要です。私たちは食事をすると、消化のために胃や腸に血液が集まります。このため、食後すぐにお風呂に入ると皮膚表面に血液が分散し、胃や腸では血液がめぐりにくくなるため、消化不良を起こす可能性が高いのです。入浴のタイミングとして、「食後1時間以上たってから」はぜひ守ってください。

反対に、食事の前に40度のお湯に15分ほどつかるのは、ダイエットに効果があるといわれています。これは、入浴により体表に血液が循環することによって、一時的に胃腸の働きが抑制されるからです。つまり、食欲を抑えることができるというわけ。まさに逆転の発想です。

(「銭湯で元気!」は毎月第2金曜日に更新します)

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ぬるめの炭酸泉を導入する銭湯も多い(写真は大田区の久が原湯