暑い日が続いています。
こんな時期は湯船に長時間つかるのは敬遠して、ぬるめのシャワーをさっと浴びて済ませたい、ついついそんなふうに考えてしまうものです。冷え性の人だって、夏はあまり冷えを感じないから体を温める必要はない、なんて思うかもしれません。しかしこの考え、医学的には間違いなのです。
東京都市大学の早坂信哉教授(医師)は、著書『たった1℃が体を変える』(2014年KADOKAWA刊)でこう述べています。
「夏のほうが汗などで体が汚れやすく、(湯船に)入浴して毛穴を開くことで、体の汚れはほとんど落ちてしまいます。また、冷房などで体や足元が冷えていることもあるので、温めてあげることは健康面でも重要です。特に女性は、毎日湯船につかるといいでしょう」
でも、夏だからこそ入浴時に気をつけたいことがあります。それは水分補給。安全かつ効果的に入浴するには、入浴の前後にしっかり水分を取ることが肝心なのです。なぜかというと、入浴によって汗をかくのは当然として(短時間の入浴で100㏄くらい、41度のお湯に15分ほどつかれば800㏄くらいの汗をかくといわれています)、入浴中に胸に水圧を受けると、利尿作用によって血液中の水分が尿として排出されやすくなるため、汗と尿を合わせてかなりの水分が失われるからなのです。
早坂教授は、水分補給について「水でお茶でもいいのですが、体への吸収がよいポカリスエットなどのイオン飲料がおすすめです」と述べる一方で、「ビールには利尿作用があり、脱水になるので逆効果」と警告しています。ビールを飲んだだけでは水分補給にならないので、水やイオン飲料を別に飲みましょう。そしてこのように意外と大量の水分を失うわけですから、入浴前にコップ1−2杯、入浴後にも同量の水分を補給することが肝心です。
もうひとつ、夏の銭湯入浴の押さえどころは、効率的な水風呂利用です。冷房の効いた室内と猛暑の屋外を行き来する生活を送っている方は、特に自律神経が乱れる季節です。また、冷たい飲み物をよく飲む季節ですから、特に女性は足がむくみやすくなったりします。生理学的にはこんな場合、自律神経の交感神経を刺激することが得策で、効率よく刺激するには「温冷交代浴」が一番といわれています。
この入浴法は、お湯と冷水の浴槽に交互につかるというもの。アスリートの間では、筋肉疲労をとる方法として最近注目されており、特に海外で積極的に学術研究がおこなわれています。冷たい水に体が触れると、交感神経が刺激されて筋肉の収縮が起こり、末梢の血流が活発になるためにむくみが取れたり、体内の炎症物質が減少したりすると考えられています。自律神経への刺激は、より深いリラックス効果を生むことも期待されているのです。
ただ注意していただきたいのは、この「温冷交代浴」が健康な人向けの入浴法であるということ。高齢者、心臓に疾患のある方、血圧の高い方、脳卒中を患った方はやらないでください。そういうリスクのない方は、以下の方法で「温冷交代浴」を試みることをお勧めします。
① まず、40〜42℃のお湯に3分ほど肩までつかります。
② 湯船から上がり、30℃くらいのぬるま湯をシャワーで30秒〜1分手足にかけます。あまり冷たくありませんが、交代浴の効果は十分です。普段から水風呂に慣れている人なら、水風呂に30秒〜1分ほど浸かっても構いませんが、無理は禁物です。
③ これを3回繰り返した後、最後はお湯につかって上がります。
夏の気候はとかく体に負担をかけるものです。体に優しい銭湯ライフを楽しみながら、暑さを乗り切ってください。
大きな水風呂がある銭湯も多い(写真は調布市・神代湯)
水風呂がある銭湯の検索は、「東京銭湯マップ」からどうぞ。
(「銭湯で元気!」は毎月第2金曜日に更新します)