■トレーニングから本番までHSP入浴法を実践

 過去3回にわたって紹介してきたヒートショックプロテイン(以下、HSP)入浴法ですが、みなさんはもう試されましたか?

⑤42℃以上の「熱いお湯」に入浴するのはいいのか悪いのか?

⑧銭湯の熱湯を利用して体を鍛え世界タイトルに挑戦することになったボクサー

⑨ずっと銭湯に通い続けている人の肌が美しいわけ

 HSPを簡単におさらいすると、ちょっと熱いと感じるお湯につかることで増える、「傷ついた細胞を修復し元気にしてくれる」タンパク質のこと。HSPが増えると、その結果免疫力も高まり、健康にしてくれるというものです(時間は40度→20分、41度→15分、42度→10分)。

 この入浴法には疲労回復だけでなく、運動機能の向上、美肌効果、代謝アップによるダイエット効果、冷え性改善などさまざまなメリットがあります。熱湯(あつゆ)の銭湯に行ってHSP入浴法を試すのは簡単なのですが、上記の中でも一番ヒートショックプロテインを実感しやすいのは、やはり限界ギリギリまで運動をしてから入浴したときでしょう。

 ということで、私、1010編集部アシスタントMが、東京マラソン初当選をきっかけに「東京都浴場組合公式銭湯ランナー」としてトレーニングから本番までHSP入浴法を実践してみました。一年ほど走ることから遠ざかり、かつトレーニングの時間もなかなか取れなかったことで、毎回足腰は悲鳴をあげていましたが、その分HSP入浴法による恩恵を実感することができました。

 HSP入浴法は認知度こそまだまだですが、様々な論文で効果が実証されているだけでなく、数多くのアスリートも実践しており、その効果はまさに折り紙つきです。1010ですでに紹介済みの「風呂ボクサー」こと木村悠選手(3月4日の防衛戦で敗れたことは残念でした)も、HSP入浴法を実践して世界チャンピオンになったのは記憶に新しいと思います。

 しかし、HSP入浴法は限られたアスリートのためだけのものではありません。私のような運動不足の銭湯ランナーはもちろん、普段運動しない人にも多くのメリットがあるので、「銭湯」でぜひ試してもらいたいと思います。

HSP

HSP入浴法の説明ポスターは銭湯に掲示されています

■20㎞走った後に熱湯の湯船がある銭湯へ

 おそらく多くの人が「半身浴」という言葉を聞いたことがあると思います。温度は38〜40度(20〜30分)、リラックスするにはちょうどいい温度だということは、みなさんも体験してご存知かと思います。これとは対照的に、HSP入浴法は42度で10分。これは慣れてない人にとってはかなりきついと思います。体によいとわかっていなければなかなかの苦行です。

 初めてHSP入浴法を試したのは、練習で20kmほど走った後でした。場所が駒沢公園だったので、そこから近い銭湯をセレクト。場所は都立大駅から徒歩1分の旭湯さんです。熱湯(あつゆ)の深風呂があるので、HSP入浴法にはもってこいの銭湯です。

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 通常は運動後クールダウンをしなければなりませんが、冬場なので銭湯まで歩いていきながら程よくクールダウンができました。
 実は私、これが人生で初めての熱湯(あつゆ)体験。しかし、久しぶりの長距離走で筋肉にだいぶダメージを受けていたこともあり、入った瞬間に熱湯のよさがすぐにわかりました。この熱こそ、疲れた脚が求めている刺激だなと。確かに慣れていない温度なので熱いことは熱いのですが、熱と深風呂ならではの水圧が、皮膚をピリピリと刺激しつつも、ダメージを受けた筋肉に浸透するように働きかけてくるのがとても心地よく、あっという間の10分でした。よくお風呂で足をマッサージするとよいと言いますが、それが必要ないくらいの心地よさでした。

 熱湯の後は普通の浴槽へ。今度は肩までゆっくり浸かります。熱湯のほうは、おへそまで浸かるのが精一杯だったので、普通の温度の広い浴槽でのんびり入浴するのはやはりいいものです。

 銭湯に向かっているときは重かった足取りも、帰りには信じられないほど軽くなりましたし、翌日の筋肉痛も思っていたよりかなり軽減され、痛みが取れる日数も確実に短縮されたのには驚きました。

 これですっかりHSP入浴法にはまったわけですが、ものは試しと思い、別の日のトレーニング後、先に普通の温度の浴槽につかってみたりもしました。 しかし、疲労している足には物足りないのです。血行促進という目的だけならこれで十分ですが、傷ついたタンパク質を修復するにはやはりちょっと熱いくらいの温度、つまりヒートショックが重要なんだなということを再確認できました。

■銭湯の湯船がHSP入浴法に適している理由

 それからというもの、自宅でも熱めのお風呂には入ったりするのですが、温度の違う湯に交互に入れるのが「銭湯」のよさだなと改めて実感。どちらか片方だけでは、質の高い入浴効果は得られないと思いました。また、大きいお風呂や深風呂だとストレッチもしやすいのです。

 肝心の東京マラソンですが、本番では4時間40分というちょうど真ん中くらいの記録で無事完走することができました。経験上、練習量よりもいいタイムだなというのが正直なところです。

 銭湯ランナーのみなさんはすでに実践してる人も多いかと思いますが、シャワーしかないランステーションを利用している方はぜひ一度銭湯へ足を運んでみてください。ランナーに限らず、立ち仕事が多い方や全身の疲労が抜けないときにも効果的です。マッサージに行って数千円払うよりも、460円のHSP入浴法をぜひ試してみてください。
(文・写真:1010編集部アシスタントM)

※都内の銭湯ではランニングをする際にロッカーで荷物を一時預かってくれる、銭湯ランナー歓迎の銭湯がたくさんあります。ランニング時に荷物を預け、走り終わったら汗を流せて便利なので、ぜひご利用ください。なお、利用する際は、「荷物の一時預かりをお願いします」とフロント、または番台に一声お掛けください。

荷物の一時預かりを行っている銭湯の一覧はこちら

※利用する際は、荷物の一時預かりを実施しているかご利用前に確認をお願いします。

 

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(「銭湯で元気!」は毎月第2金曜日に更新します)