(上写真)練馬区の川場湯でも大人気の高濃度炭酸泉(手前の浴槽)
週刊誌も取り上げたHSP入浴
免疫力の増強や、美容の面での素晴らしい効果が明らかになりつつあるHSP(ヒートショックプロテイン)入浴が注目されてきました。
今年は全国の銭湯で、お客様にこのHSP入浴法の推奨をはかっていくことが期待されています。
最近では週刊誌でも取り上げられ(「自己免疫力」を徹底強化する最新5つの技術・最終兵器「ヒートショックプロテイン」とは何か-週刊新潮2016年1/14号)、長年HSP入浴法の研究に携わってきた伊藤要子教授がその研究成果を詳しく紹介されました。決して新しいテーマではないのですが、さほど注目を浴びてこなかったものが何かをきっかけに一世を風靡するようになる、まさに「僥倖」ではありませんか。
α波、マイナスイオン(次号で紹介予定)に並ぶ、銭湯の「最強健康エレメント」と言えるかもしれません。
体温の上昇率は2.3倍
そのHSP入浴法の新しい極意が分かりました。HSPは炭酸温水によっても増加する、というのです。
昨今人気の銭湯アイテム「炭酸泉」。これがHSP増加にさらに役立つかもしれないというお話です。
水道水を沸かしたお湯と高濃度炭酸温水とで入浴比較実験を行ったところ、HSP70(ヒート・ショック・プロテインの一種)は高濃度炭酸温水のほうが明らかに増加したことが分かりました。これは『日本温泉気候物理医学会誌』という専門誌で発表されたものです(別掲)。
その実験報告によれば、10分間で体温は水道水温水で1℃上昇したのに対し、高濃度炭酸温水では2.3℃も上昇したのです。これは、炭酸温水入浴の場合血管が拡張するため、より熱が体内に取り込まれて体温が上昇するのだと考えられます。ちなみに、市販の炭酸入浴剤を家庭風呂に入れても炭酸濃度はほぼ200ppm以下なので、これほどの効果は望めないようですが、銭湯では1000ppm以上の高濃度の炭酸泉を発生させる人工炭酸泉装置を完備したところも多いので、HSP入浴法をより効率よく行うのに適しています。
最近は大きな湯船の炭酸泉を設置する銭湯が増えている。写真は練馬区の久松湯
高齢者や体の弱い人でもHSP入浴法をらくらく実践できる
炭酸泉でHSPが増加するということは、さら湯より低い温度、かつ短時間の入浴でHSP入浴法が実現できることを表しています。
これは、42℃10分、40℃20分という定番HSP入浴法がきついと感じる方、あるいは心臓が弱っている高齢者にとっても朗報と言えるでしょう。
炭酸泉設備のある銭湯を有効に利用して、今年はHSP入浴法に励んでください。
( 東京都内の炭酸泉設備のある銭湯はこちら )
大田区の改正湯では世界で唯一の黒湯炭酸泉の湯船を設置
■資料:「炭酸温水浴におけるHSP70の変化」(日本温泉気候物理医学会雑誌Vol70. No4より)
「HSP70は, 新たに合成されたポリペプチドの折れたたみ, タンパク質の輸送と品質管理, 不要になったタンパク質の分解など, タンパク質の一生にわたり面倒をみつづけているストレスタンパクの一種であり, 健康増進などに関連するものの一つとして注目されている。このタンパクは温熱刺激によって誘導されることが知られており, 今回, 炭酸温水浴と水道水浴を比較し興味ある結果が得られたので報告する。
対象は6名の健常成人 (平均年齢22.5±3.7, 男:女=3:3) に41℃高濃度炭酸温水と41℃水道水温水に10分間の全身浴を行い, 温浴前と1日後のHSP70を比較した。24時間の測定の間は温浴などの対外刺激を禁止した。どちらが先になるかはランダムとし, 3名ずつに分かれた。また, 双方の温水浴は10日間間隔をあけて測定した。その結果, 深部体温計での前胸部体温の上昇は水道水温浴1.0℃, 炭酸温水2.3℃であった。HSP70の変化は水道水温水が3.31→4.35 (AU/mg protein: p=0.08), 炭酸温水が3.42→5.04 (p<0.05) であり, 水道水温水でも増加がみられるものの, 炭酸温水で有意にHSP70の増加が認められた。このことは, 炭酸温水の方がこの条件下では水道水温水より体温上昇がまさり, そのことがHSP70の誘導につながったと考えられた。」(以下略)
この研究論文の全文(PDF)はこちら
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