前回、「銭湯が心と体に効く5つのポイント」で、
広い浴室空間が「気持ちがいい」を生み出す謎は、すでに今から20年前に説き明かされています。「1010」誌第10号(平成6年10月発行)で発表された「ついに解明!銭湯は家庭風呂より断然すぐれている」は、当時驚異の反響を呼び多くのマスコミにも取り上げられました。
とお知らせしました。20年以上も前のことですから、その号をお持ちの方も少ないと思いますので、今回はその内容をダイジェストでご紹介しましょう。
札幌の銭湯の片隅に家庭用浴槽を設置して実験
大きな風呂と小さな風呂の入浴比較実験が、平成6年6月14日から約1カ月にわたり、札幌の「喜久乃湯」(下記写真・当時)で行われました。
被験者は健康な19〜45歳の成人6人で、湯温42℃の浴槽に6分間の入浴が原則。小浴槽、大浴槽、ジャクジー浴槽の3浴槽(実験は3日間で、1日目は小浴槽、2日目は大浴槽、3日目はジャグジー)に各人がそれぞれ入浴し、発汗量、体の各部の皮膚温や口腔温(口の中の温度)、心拍数、血圧、サーモグラフィー、脳波などを測定しました。
サーモグラフィーというのは、体の表面温度を測定する装置で、体の表面から放射される赤外線を利用して、体表面の温度分布を測定するもの。各浴槽の保温効果を調べるために、これを用いました。体温は碧くなるほど低く、赤くなるほど高く表示されます。
銭湯のメンタルな長所も探る
脳波測定はリラックスの度合いを見るためのもの。大きく分けてアルファ波、ベータ波、ガンマ波がありますが、そのうちリラックスした時に現れるアルファ波を測定しました。医療の現場でも、ストレスを解消するためにアルファ波が出るように訓練する治療が行われていますが、銭湯のメンタルな長所が医学的に実証できるかどうかを調べるために行ったのです。
さらに、自覚感覚スケールといって、温度感覚、快適度感覚、疲労感覚、発汗感覚などを、質疑応答形式で採集して点数化する実験も行いました。
大きな風呂はやはりよく温まり、湯冷めしにくい
手背、足背、肩甲骨部の皮膚温度は、大浴槽とジャクジー風呂が小浴槽に比べ、出浴後20〜30分まで高く、保温効果がうかがえます。これにより銭湯浴における保温効果の高さ、すなわち肩こりなどへの有効性が裏付けられます。
口腔温と前額温度は、出浴後15〜30分で、ジャクジー浴槽が速やかな低下傾向を示していて、のぼせにくいことが判明。
自覚感覚の成績は、温度感覚については、入浴6分目では大浴槽が最も強く、小浴槽とジャクジー浴槽では差異なし。出浴後40分目では、ジャクジー浴槽で保温効果が最も強く、次いで小浴槽の順。快適性感覚は、入浴後6分目はジャクジー浴槽での快適さが最も強く、大浴槽、小浴槽は差異なし、出浴後40分目では、ジャクジー浴槽、大浴槽、小浴槽の順。発汗感覚では、ジャクジー浴槽、小浴槽、大浴槽の順となりました。
では、気になる脳波の測定結果はどうだったのでしょうか?(次号に続く)
史上初の「銭湯は家庭風呂よりすぐれている」実験を
報告した1010誌第10号(平成6年10月発行)