毎日~週1回以上銭湯に行くコアなユーザーの、自身で感じる健康状態は30.0%が「よい」、43.3%が「まあよい」という調査結果であったことは前回紹介しました。一方、銭湯に行ったことのない人の健康状態は、「よい」と感じる人が19.1%(「まあよい」は54.9%)にとどまったことも紹介しました。「よい」と「まあよい」の合計はほぼ同じながら、「よい」では10.9ポイントの差があったことは、この調査の特筆できる結果の一つでした。
このシリーズの初めに、毎日~週1回以上銭湯に行くコアなユーザーは、「非常にしあわせ」と感じている人が73.3%、一方銭湯に行ったことのない人のそれは45.9%で、圧倒的に頻繁な銭湯愛好家の「主観的幸福度」が高いことを紹介しました。この調査の最大の成果がまさにそこに集約されるのですが、では、「よく銭湯に通う(毎日~週1回以上)」、自分の健康状態は「よい」と感じる、自分は「非常にしあわせ」と思う、の3要素の絡み合いに何か特徴はあるのか? これが今回のテーマです。
表1をご覧ください。銭湯のコアユーザーは全調査対象者527人中30人、5.7%です。この中で、自分の健康状態は「よい」と最もポジティブな答えを出したのが9人、前述したようにコアユーザーの3割に当たります。この人たちの主観的幸福度(最高が10点、最低が0点)について、点数8~10を「とてもしあわせ」というカテゴリーにしたわけですが、なんと全員がこのカテゴリーに当てはまりました。つまり、「頻繁に銭湯を利用する人は、自分の健康状態がよいと感じており、しかも自分はとてもしあわせだと思っている」ということが証明されたのです。
今回の結論
・銭湯に週1回以上通っている人で「自分の健康状態はよい」と感じている人は全員「自分は非常にしあわせ」と思っている
・銭湯に週1回以上通っている人で「自分は非常にしあわせ」だと思っている人は全員「自分の健康状態はよい」と感じている
《表1 銭湯利用者の入浴頻度と主体的健康感・幸福度》
●入浴頻度:毎日~週1回
●入浴頻度:月2、3回~数ヵ月に1回
●入浴頻度:最近(半年以上)行っていない
銭湯のコアユーザーのうち、自分の健康状態が「まあよい」と感じている人は13人。コアユーザーの半数弱43.3%ですが、そのうち「非常にしあわせ」は10名で76.9%に当たります。「まあしあわせ」が3人で23.1%。「あまりしあわせでない」はひとりもいませんでした。
銭湯コアユーザーにも自分の健康状態が「あまりよくない」と感じている人が8人(コアユーザーの26.7%)おり、その中で「非常にしあわせ」が3人、「まあしあわせ」が4人、「あまりしあわせでない」が1人でした。銭湯コアユーザーで自分の健康状態が「よくない」とした人は0でしたから、コアユーザーの「あまりしあわせでない」はその1人のみ。コアユーザーの3.3%、全調査対象者では0.2%で、いかに頻繁な銭湯利用が主観的健康感や主観的幸福度を高めることに寄与しているかが分かります。
では、銭湯に最近(半年以上)行っていないと答えた人はどうでしょうか。ここに当てはまる人は153人でした。このうち主観的な健康感が「よい」は16人(10.5%)、「まあよい」は92人(60.1%)、「あまりよくない」は40人(26.1%)、「よくない」は5人(3.3%)。「よい」と主観的幸福度の関係を見ると、「非常にしあわせ」と「まあしあわせ」がそれぞれ8人で分け合いました。
このグループで自分の健康状態が「あまりよくない」と感じている40人中、「非常にしあわせ」は9人(22.5%)、「まあしあわせ」が22人(55.0%)、「あまりしあわせでない」が9人(22.5%)となっています。「よくない」と感じている5人は、「まあしあわせ」が3人、「あまりしあわせでない」が2人でした。
こう見ていきますと、最近銭湯にはご無沙汰している人でも、主観的健康感が「よい」「まあよい」は合わせて108人、つまりこのグループの70.6%は健康状態を悲観していないことが分かります。コアグループでは30人中22人(73.3%)ですから、それほど割合に差があるわけではないことが分かります。ただ、主観的幸福度はご無沙汰グループとコアグループで明らかに差がつきました。主観的健康感のよしあしにかかわらず、「あまりしあわせでない」人は19人おり、このグループの12.4パーセントを占めています。コアユーザーの3.3%と大差がついてしまいました。
すなわち、銭湯入浴にご無沙汰すると、主観的な健康感がよいにしろよくないにしろ、幸福度はガタガタと低下していく姿が浮き彫りになります。反対に、銭湯によく通う人は主観的健康感の高さと幸福度の高さが確実にリンクしている、と結論付けていいようです。
では、銭湯に全く行ったことがないグループはどうでしょうか。表2をご覧ください。調査対象257名中、「非常にしあわせ」と感じている人は110人(42.8%)、「まあしあわせ」が117人(45.5%)、「あまりしあわせでない」が30人(11.7%)という結果でした。「非常にしあわせ」のグループでは、主観的健康感が「よい」は37人(33.6%)、「まあよい」が62人(56.4%)、「あまりよくない」が10人(9.1%)、「よくない」が1人(0.9%)で、最近(半年以上)銭湯には行っていない人たちの「非常にしあわせ」グループと比べると、主観的健康感はわずかに高い傾向があります。
《表2 銭湯「非」利用者の入浴頻度と主体的健康感・幸福度》
一方、銭湯に全く行ったことがないグループの中の「あまりしあわせでない」グループは、主観的健康感の「よい」が1名(3.3%)、「まあよい」が7人(23.3%)、「あまりよくない」と「よくない」がいずれも11人(36.7%)でした。最近(半年以上)銭湯には行っていない人たちの「あまりしあわせではない」グループと比べると、主観的健康感は悲観傾向が強くなっています。これらを総合的に見ても、銭湯利用の頻度の高い人たちが、それ以外の人たちと比べて主観的幸福度と主観的健康感において大きく勝っているといえるでしょう。
健康だと思うからしあわせと感じるのか、しあわせと感じるから自分は健康だと思うのか、いずれにしてもこの二つの主観は密接に関係しているのではないでしょうか。そして銭湯の利用頻度という要素が、二つの主観を支えているという事実が証明されたことは画期的ともいえるでしょう。銭湯という開放的な空間、銭湯に集う人たちとの交流、大きな湯船と様々な設備が入浴者に与える精神的肉体的な癒し……しあわせと健康状態がよいという二つの要素を生み出す理由は、人それぞれかもしれません。ただ、まぎれもなく「よく銭湯に入る」人はしあわせであり健康なのだということが、数字の上で明確になったすばらしい調査でした。
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