著者の今井健太郎氏は、空間デザインに力を入れた「デザイナーズ銭湯」を数多く設計し、現在の銭湯ブームを生み出した立役者の一人だ。
銭湯との関わりは、建築家の修行時代に、安月給でもなんとか小遣い銭をひねり出そうと風呂なしアパートに住み、銭湯生活を始めたのがきっかけ。やがて「銭湯建築士」を志すようになり、銭湯PR誌『1010』で「ケンタローの夢銭湯」の連載を始めたところ、掲載された銭湯のイメージ図に興味を持った銭湯経営者から改修プロジェクトの依頼が舞い込み、銭湯建築士の道が開けた。
ちなみに初めて設計を手掛けたその銭湯は、足立区の大平湯。歩行湯や、またがずに入れる浴槽といった斬新な設計は、約20年を経過した今も目新しさを失っておらず、日々多くの利用者で賑わっている。
本書では、著者が手掛けた16の銭湯を紹介。異なるコンセプト、そこから導き出されるデザイン案など、デザイナーズ銭湯が生まれるまでの裏話が面白い。
暖簾やロッカー、タイル絵を解説した「銭湯の意匠ギャラリー」、入浴空間の変遷を紹介した「湯空間デザイン史」、銭湯の状況を知るための「データで見る銭湯の現状」など各種コラムも充実している。
(文:編集部)
発行:KADOKAWA 価格:1600円+税