数多くの銭湯の設計を手がけている建築家の今井健太郎さんが、今から15年前に最初に手がけたのが、この大平湯。近年、都内で増えている「デザイナーズ銭湯」のパイオニア的存在だ。

 入り口に「夢」と大きく書かれた日よけ幕が目を引く。その隣の看板には「夢銭湯 大平湯」の文字とともに、女性が入浴しているイラストも掲げられているので、銭湯を体験したことがない人にも店内をイメージしやすい。

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 さて、改装から15年を経過した大平湯だが、ロビー、脱衣場、浴室とどこを見ても手入れと清掃が行き届いて、まるで古さを感じさせない。「風呂屋の仕事って毎日の掃除と小まめなメンテナンスが大事なんだよね」と話すのは、ご主人の吉田建典さん。

 その言葉通り、白タイルを基調とした浴室は、タイルの目地にいたるまで掃除が行き届いてピカピカだ。「デザインに力を入れた銭湯を作っても、もし掃除が駄目ならお客さんは来てくれないんじゃないかな。風呂屋の仕事は掃除に尽きるよ。お客さんからも“きれいだね”ってよく誉められるよ」。

 浴室には、弓のようなカーブを描いた大きな浴槽が据えられている。この浴槽は縁が低く、またがずに湯につかれるようになっており、足をあげるのがつらいお年寄りでも楽に浴槽につかれる。

 間接照明で照らされた浴室は、洗練された雰囲気。なんともオシャレで、どこのリゾートに来たのかと錯覚してしまうほど、シンプルな造りながら居心地のよい空間だ。

 男湯には和の風情を感じさせる大きな露天風呂もある。

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 そして女湯には、歩行浴ができる長さ15m、幅3mの浴槽が設けられている。「女性には下半身の関節に痛みを抱えている人が多いから設置した」という。この珍しい浴槽では、毎月1回(第4水曜、20時〜)インストラクターを招いて歩き方教室を実施している。足腰のリハビリだけでなく、ダイエットや水中ウオーキングに利用する人も多いというこの浴槽、夜は水中照明で照らされ、なんとも幻想的な雰囲気が味わえる。

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 開店直後、浴客に交じって入浴する。仕切りのない浴槽は広々として開放感いっぱい。ほどよい温度の浴槽につかっていると、思わず夢見心地に。外気に触れる露天風呂はぬるめの温度設定なので、ついつい長居してしまう。筆者は男なので体験できないのが残念だが、女湯にある歩行浴の浴槽もぬるめの温度設定にしてあるため、長時間の運動もできるそうだ。

 湯上がりは広々としたロビーに設けられた軽食コーナーでビール、食事、デザートなどが楽しめる。おつまみが充実しているのがうれしい。

 筆者が訪れた開店直後は高齢のお客さんが多かったが、夜遅くなると若いお客さんが多くなる。なんでも北千住に多くの大学ができて、家賃の安い青井駅周辺に住む学生も多いんだとか。

 また、店は環状七号線青井6丁目交差点のすぐそばにあり、20台以上の駐車スペースがあることから、葛飾や板橋など遠方から車で訪れるお客さんもいる。

 ちなみに日曜だけは朝8時から12時の時間帯も営業している。この朝湯は長年続けているので、週末の楽しみに通っている人も多い。

 さて、ご主人の吉田建典さんは、毎年常連さんを集めて新年会を実施している。演芸会を催し、おみやげまで付く新年会は好評で、今年は170名もの人が集まったという。いかに地元の人々に大平湯が愛されているかがわかるエピソードだ。

 デザイナーズ銭湯として誕生して15年。銭湯の新時代を切り開いた大平湯は「夢銭湯」のキャッチコピー通り、夢のような空間で今日も浴客の心と体を癒している。

(写真・文:編集部)

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メニュー充実の軽食コーナー

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広々としたロビーで一服

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夢銭湯への入り口

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夜、歩行浴の浴槽はライトアップで
幻想的な雰囲気となる
(写真提供:今井健太郎建築設計事務所)

【DATA】
大平湯(足立区|五反野駅)
●銭湯お遍路番号:足立区57番
●住所:足立区青井6-21-3
●TEL:03-3887-4564
●営業時間:平日14時半〜24時、日曜8〜12時&15〜24時
●定休日:月曜(祝日は翌日休)
●交通:東武伊勢崎線「五反野」駅よりバス。「青井6丁目」下車、徒歩3分
●ホームページ:https://adachi1010.tokyo/archives/358
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