4月末にリニューアルオープンしたばかりの斉藤湯を訪ねた。昨年3月末で一旦休業、1年かけて全面リニューアルし、レトロな木造建築からビルの銭湯に生まれ変わった。和風の趣を残した入り口は、銭湯らしくて親しみやすい。
「オープンしたときは“1年間待ってたよ!” “病気してないか心配したよ”なんて、お客さんからいろいろ声をかけてもらって、うれしかったですねえ」とご主人の斉藤勝輝さん。

 早速、広々としたロビーを抜け、浴室へ足を運ぶ。浴室は白やベージュを基調として明るく、ビルの銭湯とは思えないほど天井が高い。入り口には大きなシャワーが2基、そして掛け湯用の湯船が備えられている。銭湯に慣れていない人でも、入り口にこの設備があれば、体を流さなければいけないことに気がつきやすい。

2-脱射場_0015
3-掛け湯_0030

「今回のリニューアルのコンセプトは、湯屋らしくお湯にこだわること。だから、サウナや岩盤浴はつけず、浴槽設備を充実させました」ということで、浴槽は5つ。血行がよくなることで人気の高濃度人工炭酸泉をはじめ、ジェット・寝風呂・電気風呂が備わった大浴槽、高温湯、水風呂に加え、露天風呂も設置。露天風呂の白いお湯は、装置で発生させたミクロ単位の気泡がたっぷり含まれたもので、マッサージ効果のほか、毛穴の汚れや老廃物を取り除いてくれるシルキー風呂だ。ちなみにお風呂もカランのお湯も、すべて肌にやさしい軟水を導入している。

4-浴室_0027
5-炭酸泉-女湯_0042

 さて、斉藤湯といえば、建て替え前は熱めのお湯が売りだったが、リニューアルを機に全体的にお湯の温度を下げた。その結果、家族連れや若い女性のお客さんが増えたという。とはいえ、従来の熱湯好きの要望にも応えたいと、小さいながらも熱湯の浴槽も設けた。
「昔は子どもに熱い湯へつかるのを無理強いするような場面もよく見られました。でも、今はそんなことをして子どもが銭湯嫌いになったら困る(笑)。だから、家風呂のお湯を意識して温度を下げたんです。お子さん連れの若いお父さんお母さんには、“お風呂ではお子さんを楽しく遊ばせてあげてくださいよ”、と話しています」

 14時開店。お客さんとともに湯につかる。まずは大浴槽のジェットで背中をほぐしてから電気風呂。電気のリズムが時々変わり、気持ちいい。
 次に炭酸泉。最近人気の設備ということで、大きめにした浴槽はお湯の温度が39℃とぬるめでじっくりつかれる。炭酸の泡が肌に付着するのがおもしろい。この泡が血行促進の秘訣だ。
 そして、熱湯の浴槽へ。だいたい43℃ぐらいか。
 隣の水風呂へつかってクールダウンしてから露天のシルキー風呂へ。ミクロの泡がたっぷり含まれたお湯は、なめらかな感触だ。こちらのお湯もぬるめなので長くつかれるほか、外気が気持ちいい。湯船には先客が一人。広い湯船なので向かいあうように座ってみたら、どこかでお見かけしたことがあるようなお顔……。あ、テレビでもおなじみ、落語家のK師匠だ! なんと、こちらの常連だそうな。

7-露天_0034
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 ひょんな出会いに驚きつつ、炭酸泉へ戻るとご主人の斉藤さんが浴室に入ってきた。あちこちで常連さんと挨拶を交わしている。「裸の社交場」の言葉がぴったりの風景だ。ご主人と炭酸泉につかりながらしばし話を伺う。
「私は銭湯大好き人間なんです。私から銭湯を取り上げたら何も残らない。私の人間関係も全て銭湯があってからこそ。店を築いてくれたご先祖様に感謝しています」
「銭湯のお客さんの年齢層は、赤ちゃんから90歳くらいまでと幅広い。いろいろなお客さんが来るから、話のやりとりが楽しいんです。子どもが満足した顔で帰っていくのを見ると、本当に風呂屋冥利につきますね」
 そんな言葉を口にしながら、活気のある浴室を眺めるご主人の顔は本当にうれしそうだった。

 たっぷり時間をかけてお湯を楽しんだ後は、広々としたロビーで休憩。牛乳などのドリンクをはじめ、生ビールもあるのがうれしい。

 1年がかりで出来上がった斉藤湯は、冒頭のご主人の言葉どおり、湯にこだわった素晴らしい銭湯に生まれ変わった。店を後にする人達が皆笑顔なのが、その証しだ。
 店はJR日暮里駅のすぐそば。上野、谷根千といった観光スポットを間近に控えた交通至便の地。会社帰りや週末のレジャーにぶらりと寄ってみたい。きっと湯上がりは、笑顔がこぼれるにちがいない。家族連れにもオススメだ。

(取材・文:編集部)

8-ロビー_0001

ロビーでは生ビールも提供

11-入り口_0103

銭湯らしい、存在感がある入り口

10-外観_0088

和の風情がたっぷりの玄関

9-米_0093

フロントでは「皇室献上米」に
選ばれたこともあるお米を販売。
味も折り紙つきで大人気。


【DATA】
日暮里 斉藤湯(荒川区|日暮里駅)
●銭湯お遍路番号:荒川区32番
●住所:荒川区東日暮里6-59-2
●TEL:03-3801-4022
●営業時間:14〜23時半(最終入場23時)
●定休日:金曜
●交通:山手線「日暮里」駅下車、徒歩3分
●ホームページ:http://www.saito-yu.com/
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