東京スカイツリーでにぎわう押上駅の隣、京成曳舟駅から徒歩5分のところにある「おかめ湯」を訪ねた。明治通りと曳舟川通りが交差する交差点のすぐそばで、少し奥まったところに入り口がある。建物は昔ながらの宮造り銭湯で、破風屋根の上には屋号である「おかめ」の瓦が載っている。

出迎えてくれたのはチャキチャキした話っぷりが江戸っ子らしい谷口嘉一さん。「うちは昭和26年の創業で、私が2代目です。井戸水を薪で沸かすのにこだわってるんですよ」。店の裏手には薪となる木材が山と積まれている。これを元大工だったという常連さんに頼んで切ってもらっている。

 天井が高い脱衣場には、注意書きのポスターが貼り出されているが、これは奥様の洋子さんの手によるもの。達筆で、イラストも素人とは思えないクオリティーの高さだ。

 午後3時半、常連さんとともに浴室へ。湯船は深い浴槽と浅い浴槽が一つずつの昔ながらの東京スタイル。深いほうは熱めの44度で下から気泡が湧き出るバイブラ。浅いほうは少しぬるめの42~43度で、ジェットが背中をもみほぐしてくれる。

 深いほうの湯船に身を沈めると、寒さで凍えていた体が一気に温まる。開店したばかりのせいか「おっ、今日は熱いな」と常連さんがいうほどの湯温だが、井戸水を薪で沸かした湯は体を芯まで温めてくれた。ちなみに、毎週日曜日は100%天然ハーブを使用したハーブ湯を実施していて好評だそうだ。 

 さて、銭湯の廃業が後を絶たない昨今だが、ご主人からは「私は58歳ですが、娘がまだ2歳なんです。大きくなるまで銭湯を続けますよ!」と頼もしいお言葉をいただいた。

 京成曳舟駅周辺は、近年の再開発でできたタワーマンションや商業施設と、路地が入り組み商店が連なる昔ながらの町並みが隣り合わせの「ネオ下町」な風景が広がっている。そんな移ろいゆく風景の中でも、下町の銭湯らしさを守り抜いているのが、このおかめ湯なのである。

(編集部)

※1010・132号で紹介

7213 おかめ湯(7)

銅拭きの破風屋根の上には屋号の「おかめ」が飾られている

7213 おかめ湯(6)

手前が熱めの深湯、奥が比較的ぬるめの浅湯(女湯)

7213 おかめ湯(4)

奥様手書きのポスター

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店の裏には薪の材料が山積み


おかめ湯(墨田区|京成曳舟駅)
●銭湯お遍路番号:墨田区13番
●住所:墨田区八広1-1-2
●TEL:03-3611-4459
●営業時間:15時半~23時半
●定休日:月曜
●交通:京成押上線「京成曳舟」駅より徒歩5分
●ホームページ:――
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